2026年10月22日、スイスの日立エナジーはNVIDIA Omniverseライブラリを活用した電力系統シミュレーション機能を発表した。次世代AIファクトリー向け800V直流アーキテクチャの性能を建設前に事前検証する。
日立エナジー、AIファクトリー向け800V直流電力の事前検証機能を開発
日立エナジーは、NVIDIA DSX Simパートナーエコシステムに加わる新たなシミュレーション機能を発表した。データセンター事業者が将来のAIファクトリーに導入する電力システムの性能を、実設備の建設前にデジタル環境上で評価できるようにするものだ。AIの負荷シナリオと電力システムモデルを共通環境に統合し、複数の設計案の比較やレジリエンス(※)評価を可能にする。
国際エネルギー機関(IEA)の調査によれば、2025年にデータセンターの電力需要は17%増加しており、AI特化型施設のエネルギー消費量は世界全体の電力を大幅に上回るスピードで伸びている。こうした状況を受け、本機能は高電力密度に対応する次世代の800ボルト直流(800 VDC)配電アーキテクチャを主な対象として開発された。
本機能は「OpenUSD」に基づくワークフローを活用し、電力網からサーバーラックまでの挙動を一括で可視化する。日立エナジーのマルコ・ベラルディ氏は「AIはコンピューティングの課題であると同時にインフラの課題でもある」と言及し、導入前検証が電力供給開始までの期間短縮に大きく貢献すると説明している。
なお、今回の開発は日立とNVIDIAの幅広い協業の一環であり、日立エナジーの蓄電システムが「NVIDIA DSX Ready BESS」の認定を取得した実績に続く取り組みとなる。
※レジリエンス:障害や急激な環境変化に対する復元力・耐久性のこと。電力システムにおいては、停電リスクや過負荷に耐えうる安定供給能力を指す。
導入のメリットと課題 デジタルツインが拓くAIインフラの未来
本シミュレーションの大きなメリットとして、巨額の設備投資を伴うAIファクトリーの設計リスクを大きく軽減できる点が挙げられる。物理的な建設を開始する前にシステム全体の負荷耐性を試算できるため、手戻りを防ぎつつ消費電力当たりの処理効率を高められると考えられる。
一方で、800 VDCのような先進的アーキテクチャの導入には、既存設備との互換性や高度な技術運用への対応といった課題が伴うとみられる。事前にデジタル環境で検証できたとしても、実際の現場における物理的な導入ハードルを完全に排除できるとは限らない。
とはいえ、電力アクセスの確保がAI開発の成否を分ける時代において、こうしたシミュレーション基盤の意義は極めて大きいと言える。今後は蓄電システムとの統合運用が進展し、電力インフラのデジタル設計がデータセンター業界の標準的な手法となっていく可能性が高い。
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