2026年10月21日、医療IT企業のTXP Medicalは、群馬大学医学部附属病院に生成AIを活用した医療文書作成支援システム「NSDA」が導入されたと発表した。日本国内の高度先進医療を牽引する現場において、医師の業務負担軽減を図る。
蓄積された電子カルテを参照し生成AIが医療文書の下書きをスピーディーに自動生成
群馬県前橋市に位置する群馬大学医学部附属病院は、722床を有する地域唯一の特定機能病院である。同院は重粒子線がん治療をはじめとする高度診療を担う基幹病院であり、重症患者や複雑な症例を多く受け入れている現状がある。こうした多忙を極める現場では、膨大な診療記録を読み解いて退院サマリや診療情報提供書を作成する作業が、専門医にとって重い負担となっていた。
今回導入された「NEXT Stage Document Assistant(※1)」は、電子カルテに蓄積された検査結果や経過記録をAIが自動参照し、文脈に沿った下書きを速やかに生成する仕組みだ。これにより医師の業務は「ゼロからの文章作成」から「AI作成による草案の確認・修正」へと転換される。
作業時間を短縮できれば、医師が本来果たすべき先進医療の提供や、患者とのコミュニケーションに注力できる環境が整うと言える。システム統合センターの大西真弘准教授は、自身も負担軽減を実感していると述べ、拾い切れなかった情報の気づきにもつながると評価した。現場の若手医師からも肯定的な意見が寄せられており、診療記録のさらなる充実が見込まれる。
※1 NEXT Stage Document Assistant:電子カルテ内のテキストや検査データをもとに、生成AIと独自アルゴリズムで医療文書を自動生成するシステム。
二重負担の解消と強固なセキュリティが描く、次世代の病院経営と研究のあり方
本システムが大規模病院に採用される背景には、臨床業務と研究用データの構造化を同時に実現できる点が挙げられる。文書作成の裏側で研究に即時利用可能な構造化データが自動生成されるため、研究目的でデータを再入力する二重負担が解消される可能性がある。通常診療を行うだけで価値ある学術資産が自動的に蓄積され、治験や全国データベースへの活用が期待される。
また、医療データの取扱いに厳しい大規模病院の基準を満たすため、院内サーバー環境(※2)での運用を実現した点も特徴と言える。セキュリティを確保しつつ最新AIを運用できるほか、スピードを重視する施設にはクラウド環境を提供する柔軟さも備える。
現役医師チームの設計による高い生成精度は、医師を単なる事務作業から解放する一助となるだろう。今後は大規模病院をモデルケースとして、多様な医療現場における「書く」作業の価値転換が進むと考えられる。省力化と医療の質向上の両立は、持続可能な医療提供体制を維持するうえで重要な鍵を握る見通しだ。
※2 院内サーバー環境:機密性の高い医療情報を外部に送信せず、病院内部のネットワークおよびサーバー内で安全にデータ処理を行うシステム構成。