2026年10月20日、神奈川県横浜市に本社を置くソシオネクストは、AIエージェントによるSoC設計の高度化に向け、先端3nm SoCの物理設計へAI活用を拡大したと発表した。米ケイデンスとの協業で推進する。
大規模3nm SoCの物理設計にエージェント型AIを導入
ソシオネクストは、エージェント型AIをベースとしたSoC(※1)設計開発の高度化を進めており、その適用領域を先端プロセス採用の大規模SoC物理設計へと広げた。同社はこれまでフロントエンド設計(※2)にAIを取り入れ、検証作業の効率化や知識の活用を実現してきた経緯がある。しかし、先端プロセスを採用する大規模SoCにおいては物理設計の複雑性が増しており、さらなる開発効率の向上に向けた新たなアプローチが不可欠となっていた。
この課題に対応するため、同社は米Cadence(ケイデンス)との協業を強化している。具体的には、開発フローへ「Cadence InnoStack AI Super Agent」を適用し、最先端となる大規模3nm SoCの物理設計におけるAI運用を開始した。さらに、RAGやMCPのサポート、カスタムAIスキルを導入することで、社内に蓄積された独自の設計ノウハウを実際のワークフローへと統合する。
具体的には、フロアプランニングやカスタムのタイミング解析チェック、将来的なチェックリストの自動化などが適用領域として挙げられる。膨大なエンジニアリング知識を組織全体で共有・再利用可能な資産へと昇華させ、エンジニアがより付加価値の高い設計業務に注力できる環境の実現を図る構えだ。
※1 SoC:システムの動作に必要な多数の機能を1つのチップ上に集積した半導体統合回路。
※2 フロントエンド設計:半導体開発において、仕様策定や論理設計などの初期段階を担当するプロセス。
AI連携で開発生産性を最大5倍へ 継続的な設計変革を推進
先端半導体の設計が複雑化する中、プロジェクトやチームの枠を超えた知識の蓄積と再利用は、業界全体の大きな課題となっている。ソシオネクストの代表取締役社長兼COOである吉田久人氏は、ケイデンスのエージェント型AIワークフローを活用することで、全体として最大5倍の生産性向上が期待できるとの見解を示した。
この取り組みは、単なる作業の自動化にとどまらず、価値ある技術ノウハウを将来世代へ引き継ぐ組織的資産として蓄積することを可能にする。企業にとっては設計品質や信頼性を維持しながら開発期間を大幅に短縮できる点が大きなメリットとなるだろう。一方で、新技術の現場定着やAIが出力する結果の検証など、適切な運用プロセスの確立とガバナンス維持が今後の重要課題になるものと思われる。
今後は、先行して進められてきたフロントエンド設計でのAI活用と、拡大中の物理設計におけるAI環境を統合し、SoC開発全体の包括的なAI連携が進められる見通しである。また、独自のAIアシスタント開発も推進されており、半導体設計プロセス全体の変革が加速していく可能性が高いと言える。