日本円ステーブルコイン「JPYC」を発行するJPYC株式会社は、公正取引委員会への情報提供について発表した。
新たな決済手段の普及を踏まえた競争環境を説明するとともに、加盟店によるJPYC決済の割引などに関する見解を示している。
JPYC決済の割引を巡り、公取委に競争環境を説明
JPYCの2026年10月9日の発表によると、JPYCは公正取引委員会に対し、ステーブルコイン決済の登場によるキャッシュレス決済市場の変化や、自社の取り組みに関する情報を提供した。
提供日は同年の9月14日だったという。
情報提供の背景の一つには、JPYC導入店が検討する割引や優遇措置と、既存の加盟店規約との関係を巡る懸念がある。
JPYCの導入先が飲食店や小売店、ECサイトなどに拡大する中、その一部では、決済コストの削減分を消費者に還元するため、JPYC利用者への割引や送料無料などを実施・検討する動きがあるという。
一方、クレジットカードの加盟店規約には、他の決済手段への誘導や、決済方法による価格差を制限する条項が存在する。
このため、JPYC決済を優遇すると規約違反になるのではないかとの懸念が導入店から寄せられていた。
この点においてJPYCは公正取引委員会の2022年の実態調査報告書を援用している。
報告書の引用文では、決済方法による価格差やステアリング(※)を一律に禁止する行為について、一定の条件下では独占禁止法上の問題が生じるおそれがあると指摘している。
JPYCは、この考え方がステーブルコイン決済への優遇にも当てはまると解釈している。
そのうえで、加盟店が決済手段ごとに割引などを設定することは、決済手段間の公正な競争につながるとの認識を示した。
ただし、今回の情報提供は特定事案の申告ではなく、公正取引委員会が同社の見解を支持したことを意味するものでもない。
JPYCは「導入店の皆様が安心してJPYC決済および優遇施策を導入いただけるよう、導入ガイドの整備、相談窓口の運営、導入事例の公開を進めます」とし、優遇措置をサポートする方針を示した。
※ステアリング:加盟店が消費者に対し、特定の決済手段の利用を推奨・誘導する行為。手数料の低い決済方法への切り替えを促すことなどが該当する。決済事業者による一律の禁止は、市場競争を妨げる要因となる場合がある。
手数料削減の還元に期待、加盟店規約との調整が課題
今回の動きは、ステーブルコインの普及が決済市場の価格競争を促す可能性を示している。
従来のキャッシュレス決済では、加盟店が負担する手数料が商品価格に間接的に反映される場合がある。
JPYC株式会社が加盟店手数料を徴収しないJPYC決済が広がれば、店舗は削減した決済コストを割引やポイント付与に充てられる。
消費者にとっては支払方法の選択肢が増え、店舗にとっても価格面で他店との差別化を図りやすくなるだろう。
既存の決済事業者にも、加盟店手数料やサービス条件を見直す競争圧力が生じる可能性がある。
ただし、JPYCの利用に際して手数料以外の運用負担が発生する可能性はあり、実際のコスト優位性は店舗の利用環境によって異なる。
また、既存の加盟店規約との関係も一律には判断できず、優遇策を巡る法的な不確実性は残る。
ステーブルコインが決済市場の競争構造に影響を与えるかは、加盟店規約との関係整理に加え、実際のコスト優位性や消費者への普及が鍵となるだろう。
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