日立製作所は社会インフラ向けに、フィジカルAIの安全運用を支援するガードレール技術を開発したと発表した。
AIの制御指令をリアルタイムで監視・補正し、安全制約を満たしながら過度な停止を89%削減したという。
AI制御を監視・補正し過度な停止を89%削減
日立は2026年9月14日、産業、エネルギー、モビリティなどの社会インフラでフィジカルAIを安全に運用するためのガードレール技術を開発したと発表した。
設計時の安全分析から、実行時のAI制御指令の監視・補正までを一貫して支援する仕組みである。
設計初期では、仕様書や構造情報から機器、機能、制御の関係をナレッジグラフ(※)として整理し、AIが事前ハザード分析や安全制約の抽出を支援する。
公開設計仕様を使った予備評価では、重大事故や運行停止につながり得る主要ハザード22件のうち20件を抽出した。
実行時には、停止余裕や速度、加速度、障害物との距離などを安全条件として設定する。
AIが生成した制御指令をControl Barrier Functionに基づいてリアルタイム評価し、条件を外れる場合にはAIの意図をできる限り保ちながら安全な指令へ補正する仕組みだ。
さらに、補正が困難な場合はAIとは別系統の安全装置が最終停止を担う多層保護構造を採用した。
自動機械と人が混在する環境を想定したシミュレーションでは、従来の非常時停止制御方式と比べ、過度な停止を89%削減できたとしている。
今後は、社会インフラ知能基盤モデル「IWIM」を支えるOTセーフティ技術として、実運用を想定したユースケースや運転条件で適用検証を進める。
また、「HMAX by Hitachi」の強化にも活用し、産業、エネルギー、モビリティなどのミッションクリティカルな社会インフラへの展開を目指す方針だ。
※ナレッジグラフ:情報同士の関係性を構造化して表現する手法。機器や機能、制御などのつながりを整理することで、AIが複雑なシステム構造を把握し、安全分析などに活用しやすくなる。
安全性と稼働率の両立が導入拡大の鍵に
工場や交通、エネルギー設備のように停止そのものが大きな損失につながる現場では、安全を理由に頻繁に停止する仕組みは実用的でない可能性がある。
そのため、不要な停止を抑えて運用継続性を高められる今回の技術は意義深い。
AIの制御判断を全面的に受け入れるのではなく、安全制約を別の仕組みで監視し、必要な範囲だけ補正する設計は、AIの柔軟性と従来型の安全管理を組み合わせる考え方と言える。
正常時の稼働を維持しながら、危険が迫った場面でのみ介入できれば、自動化による効率性は損ないにくくなるだろう。
また、設計時の安全分析をAIが支援することで、専門家が大量の仕様書や構造情報を確認する負担を軽減できる可能性もある。
一方、日立自身も専門家による最終レビューを前提としているように、AIによる分析だけで安全性を保証する仕組みではない点には注意が必要そうだ。
今後、フィジカルAIが社会インフラへ広がるほど、判断性能だけでなく、異常時にも安全性と稼働率を維持できる仕組みの重要性は高まるだろう。
シミュレーションで確認した停止削減効果を実環境でも再現できるかに加え、設備や運転条件が異なる現場へ安全制約をどこまで柔軟に適用できるかが、普及を左右するポイントになりそうだ。
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