2026年9月14日、JAXA認定の宇宙ベンチャー企業である株式会社天地人は、衛星データとAIを活用した水道DXソリューション「宇宙水道局」の延べ導入事業体数が100を突破したと発表した。
衛星データとAIが現場を救う 老朽化する上下水道の点検計画を効率化
天地人が提供する「宇宙水道局」は、2023年4月のサービス提供開始から順調に導入実績を重ね、提供開始から3年で累計100事業体を突破するに至った。愛知県豊田市での実証実験を皮切りに、全国の自治体や水道事業体へ普及が進んでいる。
日本の上下水道は、1960年代の高度経済成長期に整備された管路が40年以上を経過し、深刻な老朽化に直面しているのが現状だ。年間の漏水事故は2万件を超え、経年管の総延長は約18.9万kmに及ぶ。管路の更新コストは1kmあたり2億円と算出されており、自治体の厳しい財政状況や技術者不足と相まって、全管路の網羅的な更新は極めて困難と言える。
本サービスは、地表面温度や地盤変動などの衛星データに地形・地質・漏水履歴を組み合わせ、AI解析によって数メートル単位の高解像度でリスクを判定する仕組みである。従来型の漏水調査支援にとどまらず、病院や学校など重要施設への影響度を加味した管路更新計画や、下水道管きょ(※)の点検計画策定支援へも領域を拡大している。さらに、2026年9月からはスマホ等で管路図を閲覧できる「宇宙水道局 クラウド」の先行利用受付を開始した。
※下水道管きょ:下水道において、汚水や雨水を遠く処理場まで運ぶために地下に埋設されている管や暗渠(あんきょ)などの構造物のこと。
予防保全への転換がもたらす効果と課題 自治体DXの新たな標準へ
宇宙データをインフラ維持管理へ応用する取り組みは、限界に直面する地方自治体の水インフラ管理に対し、実効性の高いソリューションを提示していると考えられる。事前に危険度が高いエリアを絞り込んで集中的に調査できるため、限られた予算と人員を効率よく配分できる点が強みだ。事後対応から予防保全への移行を促し、道路陥没のような重大事故を未然に防ぐ成果が期待される。
一方で、AIの診断精度向上に向けた現地データの継続的なフィードバックや、各自治体の既存システムとのスムーズなデータ連携といった課題も存在する。広域での導入が進む中、データの標準化や現場の運用プロセスの刷新が不可欠となるだろう。
今後は上水道のみならず、下水道や他の都市インフラへの応用可能性も探られていく見通しだ。宇宙技術と現場ニーズを融合させた本取り組みは、全国の自治体におけるDXの先行事例として、持続可能な地域社会を支える基盤になると言える。