2026年9月10日、日立製作所は製造業向けに熟練者のノウハウをAIで形式知化する「設計ナレッジシステム」を「HMAX Industry」として提供開始した。日本の製造業における品質向上と生産性向上を支援する。
AIエージェントと形状認識技術を融合した次世代ソリューションの概要
製造業では熟練技術者不足や技術継承が大きな課題となる中、経験や過去の不具合情報が属人化し、手戻りや品質のばらつきを生む原因となっている。世界の製造業向けAI市場は2025年の76億ドルから2026年には98.5億ドル、2034年には1288.1億ドル(CAGR 37.9%)へ拡大すると予測されており、AI活用への期待は急速に高まりを見せている。
日立はこの課題に対し、概念空間「DIW」の中核として本システムを開発し、「HMAX Industry」のラインアップに加えた。本機能の特長は、AIエージェントが技術文書から暗黙知を抽出・形式知化し、プロンプト不要で設計ルールを自動抽出する点だ。さらに、独自の「形状認識関数データベース」と生成AIを組み合わせることで、自然言語のルールから3次元形状CADデータ(※)判定用プログラムを自動生成し、不具合箇所を視覚化する。
社内での「カスタマーゼロ」実証(日立ハイテク)では、板金・製缶図面の検図において加工困難な箇所や寸法不備を自動で100%抽出する成果を挙げており、高い実効性を立証した。
※3次元形状CADデータ:コンピュータ上で製品形状を3次元表現した設計情報。本システムは製造業の標準であるSTEP形式に対応する。
設計現場が受けるメリットと課題、そしてフィジカルAI領域への将来展望
本システムの導入により、設計ルールの一元化と自動チェックが実現し、目視検図の負担や確認漏れの大幅な軽減が見込まれる。不具合の防止や迅速な修正が可能になることで、熟練者依存からの脱却やスムーズな技術継承が進み、設計者が本質的な高度検討作業に専念できる環境が創出されると期待されている。
一方で、導入効果を最大限に高めるには、過去の知見やノウハウを十分にデジタルデータ化・体系化できているかが焦点となる。独自のノウハウが散逸した状態の企業では初期運用の負荷が高まるリスクも考えられ、蓄積したナレッジをいかに更新し続けられるかが運用の成否を分けると言える。
今後は、設計・製造・保守・品質保証を一貫支援する基盤への進化が予定されている。製造部品表(BOM)や製造工程表(BOP)の自動生成、類似形状の検索によるバーチャル試作検証の実装も進められる計画だ。現実空間の事象をデジタルでつなぎ自律制御を行うフィジカルAI領域への展開を見据え、Lumada 3.0を体現する本取り組みが産業界にどのようなイノベーションをもたらすか期待が高まる。
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