2026年8月17日、日本の建設大手である大和ハウス工業とAIソリューションを手掛けるエムシーディースリー(MCD3)は、建設業界の人財不足や技能継承といった課題解決に向けた基本合意書を締結したと発表した。
施工データと最先端AIの融合で現場の暗黙知を可視化する
建設業界では少子高齢化を背景に技能者の減少や高齢化が進み、熟練技能者が培ったノウハウの継承が深刻な問題となっている。あわせて資材価格高騰や労働時間規制、猛暑日の増加といった現場環境の変化への対応も急務だ。また、設計・調達・施工などの各工程で生まれるデータは従来、個別管理にとどまり十分に利活用されてこなかった。
こうした中、大和ハウス工業が有する施工知見およびデータと、MCD3のデータ基盤(※1)・AI技術を掛け合わせた協業プロジェクトが始動した。熟練技能者の作業・動作データを取得し、技術力の可視化とノウハウ共有を目指す。
具体的には「データ統合・基盤整備」「ノウハウの継承」「データドリブン(※2)経営の支援」など7つの検証テーマを設定した。重複作業の削減や適正工期の実現、新人技能者の早期戦力化、現場運営の高度化などの効果について共同で検証を進めていく考えだ。
※1データ基盤:社内外に散在するデータを収集・統合・蓄積し、分析や活用を可能にするITシステムの総称。
※2データドリブン:収集した様々なデータをもとに判断、行動すること。
業界課題解決への波及効果に強い期待 現場定着と連携基盤の構築が鍵
今回の協業により、データに基づく客観的な評価が浸透すれば、技能者の適切な処遇還元やキャリア形成が進むと期待できる。職人の努力や技能が可視化される仕組みが構築されれば、人財不足に悩む建設業界全体の定着率向上につながる大きなメリットとなる可能性がある。
さらに、大和ハウス工業が知見や成果をグループ内にとどめず業界へ広く展開する姿勢を見せている点は極めて意欲的だ。工種や事業領域の枠を超えて標準化されれば、建設業界全体の生産性向上を大きく推し進める引き金となる可能性を秘めている。
一方で、現場技能者の動作データ取得には撮影機器やセンサーの設置が欠かせず、現場での運用の手間や負担が増すリスクも否定できない。多層的な請負構造の中で企業をまたぐスムーズなデータ共有とセキュリティの両立を果たせるかどうかも重要だ。
実証実験を経て、現場が容易に扱える実用的な仕組みへと昇華させられるかが、今後の展開を大きく左右すると見込まれる。
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