リコーは京王電鉄の全69駅を360度空間データとして整備したと発表した。
約9,500枚の画像を記録し、駅舎の保全業務や突発事象への対応、設備管理の効率化などに活用する。
日本の鉄道現場で空間情報のデジタル化を進める取り組みである。
京王電鉄の全69駅を360度空間データ化
株式会社リコーは2026年7月22日、360度カメラ「RICOH THETA」とクラウドサービス「RICOH360」を活用し、京王電鉄の全69駅で約9,500枚を撮影したと発表した。
ホームやコンコース、改札口に加え、一部の電気室などのバックヤードも対象とし、駅舎の空間情報を統一形式で整備している。
背景には、駅舎で突発事象が発生した際、現場の状況を正確に把握したうえで対応する必要があるという課題があった。
リコーは360度空間データを活用すれば、担当者が現地へ向かう前に状況を確認し、必要な工具や資機材を準備しやすくなるため、初動対応の迅速化や再訪問の削減につながると説明している。
また、全69駅の空間情報を共有することで、図面や通常の静止画だけでは把握しにくい設備や空間の位置関係を確認しやすくする。
設備管理業務の標準化や効率化に加え、駅舎の構造を理解するための情報として、若手職員の習熟支援にも活用できるという。
撮影・登録時には、リコー独自のAI技術による人物の自動ぼかしも適用した。
顔だけでなく人物全体を検知して処理する仕組みで、複数人が写り込んだ場合にも対応する。
今後は不具合発生時の記録や点検業務の標準化に加え、車両や軌道への活用範囲拡大も進める方針だ。
360度データ活用、鉄道保全の効率化を後押しするか
360度空間データを活用した設備保全は、現場へ到着する前から状況を把握できる点が大きな利点といえる。
災害や設備トラブルなどで現場対応の時間が限られる場合、事前確認の精度を高めることが作業の優先順位を判断する助けになると考えられる。
さらに、若手職員が過去の現場情報を確認できる環境は、経験や知識を組織内で共有するうえでも役立つ可能性がある。
人手不足が続くインフラ業界では、教育期間の短縮や技術伝承を支える基盤として期待が高まるかもしれない。
一方、駅の設備や構造は改修などによって変化するため、データの更新が滞れば実際の現場との間にずれが生じかねない。
データ量の増加に伴う管理負担やアクセス権限の設定も考慮する必要があり、継続的な更新と適切な情報管理が実務上の課題になるだろう。
今後、車両や軌道などへ対象範囲が広がる場合、鉄道事業全体の保全情報を横断的に扱う基盤へ発展することも考えられる。
今回の事例は、空間データを知識基盤として活用し、安全性と業務効率の両立を目指す新たなモデルの一つとして注目できそうだ。
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