高校の「情報Ⅰ」で生成AIが作問時間を90%短縮 生徒の学習効果も向上

2025年6月2日、GMOメディア株式会社は、高校授業における生成AI活用の実証結果を発表した。
AIを活用した作問支援サービス「コエテコStudy byGMO」の導入により、教員の作問時間が大幅に削減され、生徒の学習効果も高まったことが確認された。
日本国内の高校での実践結果として注目できる。
生成AI導入で作問時間が最短10分に短縮、生徒の理解度も向上
GMOインターネットグループ傘下のGMOメディアは、高校の情報科授業で生成AIを活用した作問支援の有効性を実証した。
対象となったのは、東京都立小平高等学校など複数校で、「情報Ⅰ演習」の授業において「コエテコStudy byGMO」を導入し、教員の作問時間や生徒の学習効果に与える影響を検証した。
検証結果によると、これまで2時間以上かかっていた作問作業が、生成AIの活用により10分から20分程度で完了。教員の業務負担が大幅に軽減された。
さらに、生成された問題は正答率や学習継続意欲の向上にもつながった。
生徒からは、解説が充実していることや操作性が良い、といったポジティブな評価が寄せられており、AIによる支援が自主学習の後押しとなっている様子が窺える。
小平高校の小松一智教諭は「理解度を確認する小テストの問題を作る手間が省け、作問時間が大幅に削減された。今後は作問サポート機能を使って、より実践的な問題を作成・配信する」と語り、教育現場でのAI活用が教員の教育設計を変えつつあることを示した。
教育現場に拡がるAI活用、メリットと課題は
今回の成果は、教育現場における生成AI導入の可能性を示す象徴的な事例といえる。
特に「情報Ⅰ」は、2022年度から高校で必修化されたばかりの科目であるため、教員の教材準備にかかる負担は顕著であると考えられる。
生成AIの支援は、そのギャップを埋める有効な手段となりうるだろう。
一方、AIによる作問にはリスクも伴う。
内容の正確性や出題意図の妥当性を担保するためには、教員による最終チェックが不可欠だ。また、生成AIが誤情報を出力する「ハルシネーション(※)」への対応も求められる。
この点について、早稲田大学高等学院の吉田賢史教諭は「ハルシネーション抑制機能を搭載した生成AIで、教科書には掲載されていない発展的な問題の自動生成が可能。学習者の深い知識定着を促進できる」と述べている。
今後は、AIの精度向上と教育現場での活用ノウハウの蓄積が進めば、コエテコStudyのようなツールは情報科に限らず他教科にも波及していくだろう。
教育の質を高めつつ、教員の働き方改革にも寄与する新たな手段として、生成AIは一層の注目を集めることになりそうだ。
※ハルシネーション:生成AIが事実とは異なる情報をもっともらしく出力してしまう現象。AI利用時の大きな課題の一つ。