【まとめ】「ENS」の誕生から現在まで、類似サービスも合わせて紹介
web3業界においてメジャーとなってきた「ENS」ですが、その誕生理由と具体的な軌跡について改めてリサーチしました。ファウンダーは?運営会社は?どこを目指しているの?等々について解説します!
ENSとは
ENSは「Ethereum Name Service」の略であり、イーサリアムブロックチェーンに基づく、分散型で拡張可能なネーミング システムです。
ENSによって、「0x」から始まる英数字の長い羅列であるウォレットアドレスを簡素化し、より覚えやすく簡単な文字列を仮想通貨のアドレスとして利用できるようになります。例えば、「vitalik.eth」のように「XXX.eth」の文字列に変更することで、ウォレットアドレスの送受信における誤操作を防いだり、Dapps利用の際のウォレットアドレス入力コストを大幅に削減します。
MetaMaskでもENSを打ち込むと自動でアドレスに変換してくれたり、OpenSeaやUniswap等の連携しているDappsでもENSを活用することができます。また、ENSを活用してウェブサイトを開設することもできます。
このような汎用性の高さから、ENSは「web3のユーザーネーム」という表現もされており、web3時代のDIS(分散型ID)としての機能することが期待されています。
○ENS誕生の理由
「ENSとウォレットアドレスの関係」は「IPアドレスとDNSの関係性」に似ています。
インターネットが誕生した当初、特定のウェブサイトにアクセスしたい場合には、106.146.32.171など、訪れたいサイトのIPアドレスを直接入力する必要がありました。よって、規則性のない数字の羅列であるIPアドレスを記憶しない限り、ウェブサイトにアクセスできない状況でした。
こういった状況を大きく変えたのが「DNS(Domain Name System)」です。
DNSはIPアドレスとわかりやすいドメインを紐づけることで、誰でも簡単に特定のウェブサイトにたどり着けるようにする仕組みです。例えば、106.146.32.171というIPアドレスをprotagonist-inc.co.jpというドメインと紐づけることができます。
これによって、あらゆるウェブサイトへのアクセスが容易になり、インターネット上のコンテンツの利用が急増しました。今なお、DNSは身近な仕組みとして活用されていますね。
ENSが解決する課題や誕生背景はこの「IPアドレスとDNSの関係性」と同じです。
複雑で難しく、覚えられないウォレットアドレスを簡単な文字列と紐づけることで、誰でも記憶でき、アクセスできるようにするのがENSです。
事実、ENS誕生の背景や説明の際にもDNSを絡めた説明もしていますし、公式のドキュメントにも「ENSのゴールはDNSと似たようなもの」という記載もあります。
ENS has similar goals to DNS, the Internet’s Domain Name Service
ENS Documantation
しかし、ENSはブロックチェーンを活用したネーミングサービスのため、DNSとその技術的な特性が異なります。
その仕組みについても簡単に解説します。
ENSには「Registry」と「Resolvers」という2つスマートコントラクトによって、構成されています。
細かい技術要件は公式のドキュメントを確認いただきたいのですが、ここでは簡単に概要だけを解説します。
・Registry:各ENSドメインの所有者、対応するResolvers等を記録する。
・Resolvers:ENSをアドレスと紐づける実際の手続き等を行う。
この2つのスマートコントラクトによって、ENSは運営されています。
ENSの誕生から現在まで
続いて、ENSの誕生から現在までをざっと振り返ります。「ENS」の名前自体はよく目にする機会も多く、活用している人も多いと思いますが、細かい創業の経緯や運営会社の情報、現在までの軌跡までを知ってる人は少ないかも知れません。改めて振り返ってみます。
○ENS誕生
2017年5月4日にニック・ジョンソン(Nick Johnson)によってリリースされました。元々は、イーサリアム財団からスタートしたENSは、2018年に別組織としてスピンオフ。現在ENSはシンガポールの非営利団体ENS Labs LTDによって運営されています。
当初はオークション形式でENSの販売を行っていましたが、現在は好きなENSアドレスを検索し、空きがあれば購入することができます。
○ガバナンストークンの発行とDAO設立
ENSは公共財を作ることを目的としたプロジェクトなので、その運営を完全にDAO化されることを目標にしています。そのため、2021年11月にENSは運営の分散化に向けて、ガバナンストークンENSを配布し、DAOを設立した。
発行量1億ENSのうち、半分はコミュニティに配分され、4分の1はENSの開発貢献者に、残りは、2021年10月31日までにENSネーム(.eth)を契約したユーザーにエアドロップ(無料配布)された。
ENS DAOは代表者(デリゲート)を立てて運営していくスタイルです。投票で選ばれた代表者は個人の投票に代わり、コミュニティ全体の意思決定を行います。ENSの初代DAO代表者(デリゲート)として選ばれたのはコインベースでした。
開発チームである「ENS Labs LTD」は存在しますが、ENSネームの年間登録料とENSトークンの50%はDAOの管理下にあり、開発チームもDAOの承認によってその予算を活用します。また、DAO自体がケイマン諸島に会社として存在します。これはDAOに法的な存在が存在しない場合に税や法的な解釈を各国の規制団体に規定されるのを避けるためと、DAOと他の法人との契約書を結ぶことを可能にするためです。
※参考記事:DAO(自律分散型組織)化する、イーサリアムネームサービスの今(ENS 開発者 井上真 インタビュー 後編)
○現在
2017年の誕生から5年が経ち、web3全体の発展と共にENSも発展してきました。
公式Twitterから発表された2022年11月の数値はこちらになります。新しく7万件のENSが登録され、170万ドルの収益がありました。累計ENS発行数も279万件となり、10億円近い金額がDAOに渡されています。
HPには現在提携しているウォレットやDappsも並び、既存のDNSとの連携も可能となりました。DNSで取得した「XX.com」のようなドメインと「ENS」を連携されると「XX.com」をENSとして活用できるというものです。これによって更に利用機会が広がり、成長スピードが加速しています。
今後のweb3時代のユーザー名として、DIDの鍵となるサービスとして、更なる普及が見込まれており、その躍進から目が話せません。
(おまけ)
つい先日、ENSのグッズショップがオープンしたらしいです!保有するENSのキャップを作成できるみたいですね。興味ある方、ENSを保有している方はぜひチェックしてみてください!
ENSの類似サービス
最後に、ENSの類似サービスとして有名なサービスを2つ紹介します。
2019年に誕生。「.crypto」「.wallet」「.nft」「.bitcoin」「.x」「.coin」「.888」「.dao」「.zil」「.blockchain」などのドメインを取得することができる。2022年7月、GMOインターネットがUnstoppable Domainと提携し、NFTドメイン紹介・登録サービス「CryptoNameクリプトネーム byGMO」の提供を始めたことでも話題となった。更新料金が無料。
L1ブロックチェーンとして注目を集めるSolana上のドメインサービス。「.sol」のドメインを取得できる。新規ドメインの取得はオークション形式で行われる。
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参考文献
本記事に使用した文献は以下になります。