バーゼル・メディカル、BTC10億ドル投資を株式交換で実行へ

2025年5月16日、シンガポール拠点の医療企業バーゼル・メディカル・グループが、米ナスダック上場を契機に、ビットコイン(BTC)への10億ドル規模の投資に向けた独占交渉を開始したと発表した。革新的な株式交換方式(※)を用いるこの計画は、同社の財務体制を一変させる可能性があり、アジアの医療業界に波紋を広げている。
バーゼル・メディカルが描く「医療×暗号資産」の新機軸
バーゼル・メディカル・グループは、整形外科や外傷治療を手がけるシンガポール系企業であり、米ナスダック市場に上場済みの医療事業者である。同社はこのたび、革新的な株式交換契約を通じて最大10億ドル相当のビットコイン投資を目指すと発表した。
正式な契約締結に向けた独占交渉が進行中とされており、合意に至れば、同社はアジアの上場医療企業の中でも類を見ない規模の暗号資産保有企業となる。
この動きは、財務構造の抜本的な変革を目的としたものとみられており、CEOのダレン・チョア氏は「この投資により、保守的な財務方針を維持しながらも、アジア成長戦略を遂行する前例のない力を得る」との意見を示した。
具体的な交換スキームの詳細は明らかにされていないが、現金による直接取得ではなく、同社株式との引き換えを用いる非従来的な手法が想定されている。
同様の戦略は米国でも増えており、2020年にストラテジー社がBTC購入に踏み切った際、その株価は短期間で急上昇した。
この事例に続く形で、キャッシュの購買力低下に対応すべく、ビットコインをバランスシートに組み込む企業は徐々に増加傾向にある。
医療業界にも浸透するBTC活用の可能性
今回の発表は、医療と金融の垣根を越える象徴的な出来事として注目を集めるだろう。
これまで暗号資産投資はテック系やマイニング事業者が主導してきたが、バーゼル・メディカルのような伝統的なヘルスケア企業が戦略的にビットコインを取得しようとする動きは異例であると考えられる。
加えて、同社が選んだ「株式交換」という調達手法は、既存株主の理解と市場の受容を得られるかが今後の焦点になると思われる。
市場の短期的反応は今のところ限定的だが、実際の契約締結とBTC購入が完了すれば、ビットコイン価格にも一定の影響を与える可能性があるとみられる。
さらに、医療業界における資産保全手段としてBTCの活用が進めば、他企業も追随する展開が予想される。
一方で、ビットコインの価格変動リスクや規制の不透明性といった課題も残る。
金融資産としての性質が不安定であるため、医療分野のように安定性が重視される業界においては、慎重な運用が求められるだろう。
それでも、バーゼル・メディカルが描く「ビットコインを活用した成長戦略」は、変動の激しい市場環境において柔軟な財務戦略の新たな一手と見ることもできる。今後の業界動向を占う上でも、この試みは重要な前例となるかもしれない。
※株式交換方式:企業が現金ではなく自社株式を対価として他の資産を取得する取引方法。希薄化リスクを伴うが、現金流出を抑えられる点が特徴。