マスク氏、米政府の非効率に苦言 AIで一部公務員代替へ

現地時間2025年5月4日、米国で開催されたミルケン研究所グローバルコンファレンスの非公開会合において、起業家イーロン・マスク氏が米政府の非効率性を批判し、「一部の公務員業務はAIで代替できる」との見解を示したことが明らかになった。
5月5日、ブルームバーグが関係者からの発言として報じた。
マスク氏、AIによる行政効率化は不可避との認識を強調
マスク氏は、ミルケン研究所グローバルコンファレンスの非公開会合に参加した。
財界や政策関係者が集うこの会合で、同研究所の代表マイケル・ミルケン氏との対談にマスク氏は臨み、AI、宇宙開発、神経インターフェース技術にわたる幅広いテーマに言及した。
とりわけ注目を集めたのが、米国政府の非効率性に対する強い批判と、AIによる行政業務の一部自動化を提唱する発言だ。
発言の中でマスク氏は、現行の行政機構は肥大化と無駄が顕著であり、一部の公務員の定型的な仕事はAIで代替すべきと語ったという。
マスク氏は現在、政府効率化省、DOGEにおける職務を縮小する準備を進めており、自身の任務はほぼ完了したと明かしている。
DOGEは公務員の削減や連邦政府のコスト削減を掲げてきた。その実効性を疑問視する声もある中、AI導入という新たな論点が提示された格好だ。
AI行政の実現性と懸念
マスク氏の提言は、長年にわたり行政改革を模索してきた米政府にとって一石を投じるものとなるだろう。
すでに一部の地方自治体では、AIによる事務処理の自動化や行政文書の分類といった導入事例が見られ始めているため、マスク氏の主張が唐突なものではないことも確かだ。
とはいえ、行政判断の透明性、説明責任、そして倫理面におけるリスクをどう管理するかという課題は依然として重い。
また、テスラの経営における関心の分散も、今回の発言の文脈から切り離せないだろう。マスク氏は2025年5月以降、テスラへの関与を強めると発表しているため、AIや行政改革への関与が一時的に縮小される可能性もある。
投資家の間では、テスラの販売不振とマスク氏の多方面への関心の分散が収益性を損ねているとの指摘が出ており、企業経営への注力が求められている。
一方、過去にもマスク氏はニューラリンクやスペースXにおいて、テクノロジーの活用を積極的に推進しており、政府機関に対してもその考え方を適用しようとしている節がある。
政府の非効率性を解決する手段としてのAI導入は、単なる発言ではなく、長期的構想の一環とも読み取れる。
AIをどう行政機構に組み込むかが現実的な政策議論となり、今回のマスク氏の発言がその火付け役になる可能性も否定できない。