ZennがAI執筆ガイドラインを改定 「禁止しないが乱造は避けて」

2025年6月5日、エンジニア向け情報共有プラットフォーム「Zenn」を運営するクイーンビーは、生成AIによる記事投稿の増加を受け、利用規約およびコミュニティガイドラインを改定したと発表した。
AI活用自体は禁止しないが、乱造を防ぐための明確な基準を設けた。
AIの活用は容認、ただし「品質担保」を明記
Zennの新ガイドラインでは、生成AIを利用した記事執筆を原則禁止したものではなく、むしろ「より質の高い記事を執筆するために生成AIを活用してほしい」と明記された。
ただし、内容の正確性を確認せずにそのまま投稿する行為や、製品・サービスの宣伝を主な目的とした記事、フォロワー獲得や外部サービスでのスコア上昇を狙った乱造行為については、明確に禁止事項として定められている。
さらに、広告や採用目的の投稿も新たに違反対象として追加されており、ガイドラインの厳格化が図られている。
これらの変更は、2025年1月ごろから増加していたAI生成記事に関するユーザーの不信感や違和感を受けて検討されたものだという。
「AI執筆の時代」に対応 著者性が新たな評価軸に
ガイドライン改定の背景には、ユーザーの「読む側の期待」が大きく影響している。
運営によるヒアリングでは、「ブログでは著者自身の経験や考察を読みたい」との意見が多数を占めたという。
AIで自動生成されたと見られる記事が増えたことにより、「著者性」が不明瞭なコンテンツに対する違和感が顕在化した形だ。
Zenn運営側は「AI利用は今後も進む前提」としたうえで、「より精緻に利用のあり方を考えるべき」と見解を示している。
AIを利用すること自体を否定するのではなく、人間の経験や思考と補完し合う形で活用するべきだという立場だ。
ZennによるAI執筆ガイドラインの改定は、AI技術の活用と人間らしいコンテンツの両立を試みるものであり、時代の変化に対する柔軟な対応といえる。
一律にAIを禁止するのではなく、「品質担保」を重視したスタンスにより、創作や執筆の多様性を維持しつつ、読者の信頼感を回復しようとする点は、コンテンツを重視した対応と評価できる。
一方で実務的には、AIと人間の共同生成物をどう評価し、どこまでが「乱造」とされるのかは難しい課題になるだろう。
AIを用いた執筆と人間の経験がどの程度融合されているかを判定する基準は、ある程度主観的にならざるを得ないため、運用において恣意性や一貫性の欠如が生じるおそれがある。
今後、Zennのようなナレッジシェア型プラットフォームにおいては、「著者性」や「一次経験への根ざし」がコンテンツの信頼性指標としてますます重要性を帯びていくだろう。
生成AIの技術が精緻化するなかで、「人が書いた」ことの付加価値が再評価される流れにあると言える。