米SEC、仮想通貨タスクフォース始動 規制方針の転換点となるか

米国証券取引委員会(SEC)は2025年1月21日、新たに「仮想通貨タスクフォース」を設立した。従来の事後的な取り締まり中心の規制アプローチを見直し、業界との協力を強化する方針を打ち出している。
3月22日には初会合が開かれ、証券の定義や法改正の必要性について議論が行われた。本タスクフォースの設立は、米国の仮想通貨規制の転換点となる。
SECの規制方針転換とタスクフォースの狙い
SECはこれまで、仮想通貨市場に対し「執行による規制(※)」を行ってきた。これは、事前に明確なルールを設けるのではなく、違反と見なされる事例が発生した後に訴訟や制裁を行う手法である。しかし、このアプローチには批判が多く、業界の発展を阻害する要因ともなっていた。
新たに設立された仮想通貨タスクフォースは、こうした規制手法の見直しを目的としている。責任者に任命されたヘスター・パース委員は、「規制の明確化と業界との協力を強化する」と述べ、これまでのSECの姿勢を大きく転換する方針を示した。
特に、仮想通貨が証券に該当するかどうかの基準の明確化、SECの手続きの見直しが主要な課題となっている。
また、タスクフォース設立からわずか2日後の1月23日には、SECが職員会計公報121を撤回した。これは、仮想通貨を保有する企業が財務諸表上の処理に関して厳格なルールを求められていた規制であり、多くの企業にとって負担となっていた。迅速な撤回の動きは、SECの新たな方針を見据えている。
※執行による規制:事前のルール策定ではなく、違反行為が発生した後に制裁を行う手法。予測可能性が低く、業界の混乱を招く要因とされる。
初会合での議論と今後の展望
3月22日、ワシントンD.C.において仮想通貨タスクフォースの初会合が開催された。会議には、証券弁護士や仮想通貨の専門家が集まり、証券の定義や法改正の必要性について意見を交わした。
会議では、SECの従来の規制手法に対する批判が相次いだ。
特に、「執行による規制」が仮想通貨業界の発展を妨げてきたという指摘が多かった。
投資家保護や資本市場の形成にどのように寄与するかが不明確であった点も問題視されたようだ。
また、証券の定義についても議論がなされた。
アート作品の購入を例に挙げ、単に投資目的で購入されたからといって証券とみなされるわけではないとの主張があった。これは、仮想通貨の証券性を巡る議論において重要な視点となる。
今後、仮想通貨タスクフォースは定期的な会合を通じて規制の明確化を進めていくと考えられる。特に、証券の定義を巡る議論が焦点となり、最終的には法改正の議論へと発展する可能性が高い。
また、業界との対話が活発化することで、仮想通貨市場の発展と投資家保護のバランスを取る新たな枠組みが形成される見通しだ。
ただし、SECの方針転換に伴い、新しい規制がどのような形で整備されるかは未知数である。
長期的には、規制の明確化が進むことで、米国の仮想通貨市場の競争力が向上し、より多くの投資資金が流入する可能性がある。しかし、規制の変更には時間がかかるため、短期的には不安定な状況が続くことも想定される。
企業や投資家は、今後の会合の動向も注視する必要があるだろう。