仏Mistral、AIエージェント構築APIを発表 複数モデル連携やMCPとの統合も実現

2025年5月27日、仏AIスタートアップMistral AIは、AIエージェント構築のための新たな開発ツール「Agents API」を発表した。Mistral製LLMの柔軟性を活かし、MCPツールとの連携や複数エージェントの統合も可能な仕組みを提供する。
Mistral、AIエージェント開発を容易にする新APIを提供開始
Mistral AIが発表した「Agents API」は、自然言語での高度な指示をもとに、エージェントが計画立案、ツール活用、タスク実行を自律的に行うシステムの構築を可能にするものだ。
Mistralが定義するAIエージェントとは、LLMを核とした自律システムであり、与えられた目的に対し最適な手順を策定し、ツールを用いながら目標達成に向けて行動できる存在とされる。
Agents APIは、ベースとなる言語モデルに加えて、アクション定義、コンテキストトラッキング(※1)、そして他エージェントとの連携機能といった複数の要素で構成されており、ユーザーはそれらを自由に組み合わせてエージェントを設計できる。
注目すべきは、MCP(※2)ツールとの統合により、Pythonコードの実行、Web検索、画像生成、Mistral Cloudからのドキュメントの取得といった高度な処理を外部サービスと連携して実行できる点である。
エージェント同士を連携させる(オーケストレーション)ことで、複数のエージェントが一つのタスクを協調して進めることもできる。
Mistralは実際に、財務アドバイザリエージェントが複数のMCPサーバをオーケストレーションし、分析から報告・アーカイブまでを担うデモ動画も公開している。
複数エージェントの協調がもたらす実用性と課題
Agents APIの登場により、企業の業務効率化や自動化が一層進むと期待される。特に複数エージェントによるオーケストレーション機能は、従来のチャットボットや単一AIによる支援とは一線を画す。エージェント同士が連携し、役割分担してタスクをこなすことで、人間の関与を最小限に抑えたプロセス設計が可能になる。
加えて、MCPとの連携によって、エージェント間の意思疎通がスムーズになり、高度な判断や分散処理が現実のものとなる。これにより、金融・医療・法務といった複雑で専門性の高い業務においても、AIによる実行可能な領域が拡大していくと考えられる。
一方で、こうしたエージェントが誤作動を起こした場合の責任所在や、セキュリティ・プライバシー面での課題も残ると考えられる。特にWeb検索やコード実行を行う際の信頼性や悪用リスクは、今後の普及に向けた重要な検討事項となるだろう。
※1 コンテキストトラッキング:エージェントが複数のやりとりや処理履歴を保持し、文脈に基づいた判断や行動を可能にする技術。
※2 MCP(Multimodal Capabilities Provider):テキスト生成以外の機能(画像生成、コード実行、情報検索など)を外部APIや専用モジュールとして提供する仕組み。エージェントが多様な処理を可能にする拡張手段として注目されている。