日立システムズ、AIを活用した水道設備の異常検知サービスを提供

日立システムズは2025年5月19日、AIを活用した「AI異常検知サービス」の提供を開始すると発表した。日本国内の水道設備における異常をリアルタイムで把握し、安定した水供給と業務の効率化を図ることを目的としたサービスである。
老朽化が進む水道設備の課題に、AIで挑む日立の戦略
日本の水道インフラは、全国的に老朽化が進み、突発的な設備の故障や漏水が社会課題となっている。こうした背景を受け、日立システムズは「CYDEEN 水インフラ監視サービス」の一環として、新たに「AI異常検知サービス」の提供を開始した。
目的は、水の安定供給と運用効率の両立を支援することにある。
本サービスは、水圧・水位・流量・水質といった主要なパラメータを常時モニタリングし、収集したデータをクラウド上で一元管理する。
特に注目すべきは、AIが正常時のデータから学習した基準値と、リアルタイムで取得されるセンサーデータを比較し、異常を即座に検知する仕組みである。わずかな変化も捉える高度な分析により、水道管破裂や断水などの重大なトラブルを未然に防ぐことが可能となる。
「CYDEEN 水インフラ監視サービス」は、2023年7月より神戸市水道局において導入されており、60カ所以上の配水減圧弁付近で水圧データの提供・運用が行われてきた。
この運用実績から、収集したデータの二次活用ニーズも明確化されており、AIによる分析の必要性が高まりつつある。
スマートインフラの実現へ、日立が描く次の一手
日立システムズのAI異常検知サービスは、単なる監視システムの枠を超え、水道事業全体のスマート化を促進させるものであると考えられる。
AIが自動的に異常兆候を検知することで、従来は人手による目視や定期点検に依存していた保守業務が大幅に効率化されるだろう。水道局員の負担軽減はもちろん、異常発生時の初動対応の迅速化にもつながり、住民への影響を最小限に抑える効果が期待される。
今後、日立システムズは本サービスのさらなる高度化を図るとともに、他自治体や民間企業との連携を視野に入れた展開を計画している。AI技術の進化を取り入れることで、予測保全(※)や異常原因の自動特定といった付加価値の高いサービスも実現可能になる見通しである。
この動きは、単なる設備管理の改善にとどまらず、持続可能なインフラ運用、つまり、スマートインフラの確立に寄与するはずだ。
水という生活インフラの安全性と信頼性を支える上で、同サービスの果たす役割は今後さらに大きくなると考えられる。
※予測保全:故障が起こる前に異常を予測し、必要な対応を先回りして実施する保守手法。