マイクロソフトが挑むAI標準化 MCPで広がるAIエージェント連携

2025年5月18日、米マイクロソフトの最高技術責任者(CTO)であるケビン・スコット氏は、異なるAIエージェントの連携を実現する標準技術の採用を推進する方針を示した。AIの互換性向上と業界標準化に向けた動きが本格化している。
AIエージェントの標準化が進む理由 MCPがもたらす連携の革新性
AIエージェントは特定のタスクを自律的にこなすソフトウェアで、近年はバグ修正やデータ管理などでの活用が進んでいる。しかし現状では、異なる開発企業のエージェント同士が効率よく連携することは困難だ。
そこでマイクロソフトは、業界標準となり得るプロトコルの採用に踏み切った。
この動きの中心にあるのが、「モデル・コンテキスト・プロトコル(MCP)」だ。これは、グーグルの支援を受けるAIスタートアップ「アンソロピック」が提唱するオープンソース技術で、AIエージェント同士が情報をやり取りし、協力してタスクを遂行するための枠組みを提供する。
スコット氏は、このMCPの構想について「AIによるエージェントウェブ(※)の時代が到来する」との見解を示した。エージェント間の意思疎通が円滑になれば、複雑な業務プロセスの自動化も現実味を帯びる。
さらにマイクロソフトは、AIエージェントの記憶能力向上にも注力している。これは単発的な命令処理から脱却し、継続的な文脈理解や長期的なタスク遂行を可能にするための基盤整備と位置づけられる。
AIエコシステムの再構築へ 業界を巻き込む連携標準のインパクト
マイクロソフトが先導する標準化の流れは、他の大手企業や開発者にも無視できない影響を与えるだろう。特に、AIエージェントの市場が拡大する中で、互換性と連携性は差別化の重要な指標となっていくだろう。
また、今後エージェントウェブという新概念が定着すれば、ユーザーが複数のAIを意識せずに利用できる未来も見えてくる。これはインターフェースの変革でもあり、人間とAIの関係がより自然で、持続的なものへと進化する可能性を秘めている。
一方で、この標準化には慎重な姿勢も求められる。
独自路線を堅持したい企業にとって、共通プロトコルの採用は技術的妥協ともなりうるからだ。また、エージェント同士の連携が進むことで、セキュリティやプライバシーの懸念も再浮上することは避けられないだろう。
それでもなお、MCPのような標準技術が普及すれば、AI開発のハードルは下がり、中小企業や新興スタートアップにも大きな恩恵がもたらされると思われる。業界全体のエコシステムが広がり、よりオープンで協調的な開発環境が実現する可能性は高い。
※エージェントウェブ:複数のAIエージェントがネットワーク上で連携し、相互に補完しながら作業を行う構造。Webにおける情報共有のように、AI間の協力を前提とする新しいインターフェース概念。