グロービス調査で判明 AI時代の若手リーダーを悩ます「スキル格差」

2025年5月12日、株式会社グロービスが公表した国内調査によって、AIを活用する若手リーダーが最も直面している課題は「メンバー間のスキル格差」であることが明らかになった。業務効率化が進む一方、組織内の習熟度の違いがリーダーの悩みの種となっている。
AI導入の効果と限界 可視化されたスキルギャップ
グロービスが2025年3月31日から4月3日にかけて実施した調査では、主任クラス以上の30代ビジネスパーソン331名を対象に、AIの導入状況とそれに伴う課題を聞き取った。
その結果、業務効率化の観点から「定型業務の最適化」「データ分析・予測」「コンテンツ制作支援」といったAI活用の目的が挙がった一方で、現場でリーダーが最も強く感じているのは、チーム内におけるAIリテラシーの格差であることが判明した。
回答者の35.7%が「メンバー間でのAI活用スキルや知識の格差」に課題を感じているとし、「AIアウトプットの品質管理」や「既存業務との整合性」よりも高い割合を示した。この傾向は、AI導入が進む企業ほど、実務レベルでの“個人差”が成果に直結する局面に立たされていると考えられる。
また、リーダーとして重視している役割について尋ねた項目では、「業務効率化の推進」や「スキル向上支援」が上位を占めており、マネジメント層がAI技術の活用と同時に、人的リソースの底上げにも注力している構図が浮かび上がった。
リーダーに問われる“育成型”の視点 AI時代に必要なスキルとは
技術の進展が日進月歩で進むなか、リーダーに求められるのは、単なるツールの導入や指示の徹底ではなく、各メンバーの理解度や習熟度に応じた育成体制の整備であるといえるだろう。
AI活用が本格化する現在、知識や操作スキルに個人差があれば、チーム全体のパフォーマンスが不安定になる恐れがあると考えられる。
特に注目すべきは、今回の調査において43.2%のリーダーが「AI活用スキルの向上支援」を自らの役割として重視している点だろう。これは、組織としてAIを浸透させるには、トップダウンではなく、ボトムアップ型の理解促進が不可欠であるという認識の広がりを示唆していると考えられる。
今後、企業がAI技術を競争力の源泉とするには、導入前後の教育設計や、継続的な学習環境の提供が鍵を握るとみられる。こうした支援をいかに仕組みとして組み込めるかという点が重要になるだろう。
リーダーシップの定義が「指揮・管理」から「育成・伴走」に変わりつつあるといえる。