10月施行の法改正に対応 育休取得を支援する新システム「workingU」α版が提供開始

2025年5月7日、illumista株式会社が法人向けの育休支援システム「workingU(ワーキングユー)」のα版を提供開始した。同年10月施行の改正育児・介護休業法(※)への対応を目的とした国内企業向けの新サービスである。
AIとスマホを活用し、育休取得の不安を解消する「workingU」の実力
「workingU」は、AI技術を活用して育休取得に関わる業務の効率化と従業員の不安解消を同時に目指すシステムだ。注目すべき機能は、個々の従業員の状況に基づき複数の育休プランを自動で生成・提案する機能で、選択肢の提示により当事者の意思決定をサポートする。
また、スマートフォンを活用したメッセージ機能が備わっており、育休中の従業員と人事部門の双方向のコミュニケーションが可能となる。従来はメールや電話で煩雑だったやり取りを効率化し、問い合わせや連絡の手間を軽減している。
業務フロー上のタスクもシステム内で一元管理される。面談の予定や書類提出の期限を自動でリマインドし、対応漏れを防止する仕組みだ。これにより人事労務担当者の作業負担が明確に軽減されるという。
さらに、収入シミュレーション機能が搭載されており、育休中の家計に関する具体的な試算も可能となる。これは制度活用をためらう一因となっている経済的不安を払拭する有効な手段と考えられる。
制度対応だけではない、「働き方」そのものを変える可能性と展望
法対応だけにとどまらず、「workingU」がもたらす本質的な価値は、育休取得を前提とした組織文化の変革である。これまで育休取得は特例とされる風土が一部に残っていたが、ツール導入により制度活用の標準化が期待される。
企業側にとっても導入メリットは大きい。育休取得率が上がれば従業員満足度やエンゲージメントが向上し、離職リスクの低減につながる。人材育成コストの最適化にも寄与すると見られており、特に中堅企業にとっては経営戦略上の強みになるだろう。
こうしたAIを中核に据えた人事支援の流れは、今後さらに強まる見込みだ。特に生成AIとの連携や、個々のキャリア設計に踏み込んだサポート機能が加われば、単なる「制度支援ツール」から「ライフデザイン支援基盤」へと進化し得る。
一方で、α版の段階では具体的な導入企業の情報は公表されていない。ユーザー体験や導入効果を数値で示すとともに、多様な利用者の声を反映した運用体制の構築が求められる局面にある。
「育休を取得しやすく、復帰しやすい社会」に向けた一手として「workingU」への注目度は高まるばかりだ。
※改正育児・介護休業法:2025年10月施行の改正法で、企業に対して育児・介護休業の取得支援と職場復帰の体制強化を義務付ける内容を含む。従業員個々の事情への配慮が求められる。