国内水冷GPUサーバー普及に向けた産学連携 フィックスターズ・ゲットワークス・NTTPCが湯沢で共同検証へ

2025年5月7日、フィックスターズはゲットワークス、NTTPCコミュニケーションズ(NTTPC)と共同で、水冷GPUサーバーの国内普及に向けて共同で環境整備に取り組むことを発表した。
新潟県湯沢町のデータセンターにて本稼働環境を構築し、生成AI時代における冷却技術の標準化を目指す構えだ。
水冷GPUサーバーが求められる背景と、日本市場の導入停滞を打破する3社連携
近年、生成AIの爆発的な進化に伴い、GPUの性能は飛躍的に向上している。
それに比例する形で、消費電力と発熱量も増加しており、これまで主流だった空冷方式では冷却効率が追いつかない場面が目立ち始めている。
こうした課題を受け、水冷式GPUサーバーの導入が海外を中心に進んでいるが、日本では普及が進んでいないのが現状だ。
その要因には、ベンダー間で冷却仕様が統一されていないことや、GPUごとに適合するCDU(冷却水循環装置)の選定が必要である点が挙げられる。
また、水配管を伴う設備改修への懸念や、データセンターへの水引き込みに対する保守的な姿勢、さらに水冷に関するノウハウの不足も障壁となっている。
こうした状況を打破すべく、3社が共同で環境整備に取り組む。
フィックスターズは水冷GPUサーバーの実証実験機を提供し、性能と信頼性の評価を担当する。
ゲットワークスは、現場施工や冷却環境の構築に必要な技術支援を行い、NTTPCはハードウェアエンジニアリングの観点から運用検証を担う。
各社の知見を持ち寄ることで、日本市場における水冷技術の標準化と普及を見据えた実証が本格的に始動する。
湯沢から広がる水冷環境のモデルケース、業界の最適化につながるか
今回の検証プロジェクトは、新潟県湯沢町にある「湯沢GXデータセンター」にて行われる。
同施設は地域の自然エネルギーと低温環境を活かした先進的なデータセンターとして知られ、水冷技術の運用検証に最適な実証フィールドとされている。
フィックスターズは、ここでの稼働データや知見を2025年夏までに収集・分析し、今後設立予定のコンソーシアムを通じて業界内で共有する予定だ。
この取り組みによって、水冷GPUサーバーの実効性が可視化されれば、国内データセンターにおける導入ハードルは一気に下がることが期待できる。
特に、AI開発や機械学習処理を支えるインフラにおいては、冷却効率と運用コストの最適化が喫緊の課題となっているため、水冷方式の普及は重要な選択肢の一つになると考えられる。
一方で、水漏れや保守対応といった運用上のリスクやコスト構造の再設計が必要となる点もあり、導入に踏み切るには一定のハードルが残ることも事実だろう。
それでも、実証によって得られるデータとナレッジが共有されることで、国内インフラの最適化が一段と現実味を帯びるのではないだろうか。