宇和島市がAI教材「すららドリル」を小中学校に導入、個別最適学習の実現へ

株式会社すららネットは2025年5月1日、愛媛県の宇和島市教育委員会が「すららドリル」を導入し、小中学校28校、約4,000人の小中学生が2025年4月から利用を開始したことを発表した。
AIが個に応じた学びを提供、宇和島市の教育DXが本格始動
「すららドリル」は、児童生徒一人ひとりの理解度やつまずきをAIが解析し、出題内容や難易度を自動で調整するアダプティブラーニング型教材である。国語・算数/数学・英語・理科・社会の5教科に対応しており、学年を超えた柔軟な学びを実現可能にしている点が特徴だ。
教材内には20万問を超える豊富な問題群に加え、弱点診断機能やアニメーションによるレクチャーなど、多様な学習支援機能が搭載されている。直感的な理解を促進する工夫も随所に施されており、生徒は効率的に学力を定着させることができる。
宇和島市教育委員会はこの導入を通じて、「一人ひとりのウェルビーイングと包摂的で持続可能な地域社会の共創」を目指す教育ビジョンを具現化しようとしている。
ICTを活用し、すべての子どもたちに等しく学習のチャンスを提供する姿勢が明確であり、従来の一斉指導型の授業を補完・進化させる狙いがある。
この施策の目的は、単なる学力向上にとどまらない。教育委員会の岡崎正太郎係長は、「学ぶ喜びを感じられる環境づくりに貢献してくれると期待している」と述べており、生徒の自信や自己肯定感の向上、さらには教員の業務負担の軽減にもつながると見られている。
ICT教育の未来を拓く宇和島モデル、全国展開の布石となるか
宇和島市のAI教材導入は、教育現場の課題である「一斉授業の限界」と「個別最適化の実現」という二律背反のバランスを取る先進的な取り組みといえる。
従来の教室では見落とされがちだった個々の理解度の差に対し、リアルタイムでの適応を可能にする「すららドリル」は、まさにその解決策として期待される。
今後の展望としては、今回の導入成果が可視化され次第、他地域の自治体への導入が加速する可能性が高い。特に、都市部に比べて教育資源の偏在が課題となっている地方自治体にとっては、学習格差の是正手段として大きな関心を集めるだろう。
一方で、ICT機器や通信環境の整備状況、教員側のリテラシー対応、教材費の財源確保など課題も依然として存在する。導入後の継続的な運用支援と効果検証が今後の鍵を握るといえる。
宇和島モデルは、自治体主導の教育DX(※)における具体的なケーススタディとして、今後の教育行政の設計に重要な示唆を与えることになるだろう。教育×AIというテーマが、地方創生や社会全体の包括的成長につながる起点となるか注視したい。
※教育DX:Education Digital Transformationの略。教育分野におけるデジタル技術の導入によって、学習・指導の在り方を根本から変革する取り組みのこと。