【Week : 6/9-6/13】ヘルステック企業カケハシが140億の大型調達　スタートアップ資金調達リサーチ

6月が始まり、さっそく様々な分野で活躍するスタートアップ企業が資金調達を発表しました。

この記事では、6月9日から6月13日の間にリリースされた、スタートアップの資金調達ニュースをまとめています。さらに、事業内容、調達金額、今後の展望についても詳しく解説します。

医療プラットフォームを提供するカケハシ、約140億円の資金調達を実施

事業内容: クラウド型電子薬歴・服薬指導ツールの提供、薬局向けプロダクトの開発・運営

調達金額: 約140億円

引受先: ゴールドマン・サックス、DNX Ventures、JPS グロース・インベストメント投資事業有限責任組合ほか

今後の展望: M&Aや新技術への投資を積極化、開発体制の強化に向けたエンジニアの採用、営業・サービス導入支援・カスタマーサポート体制の充実

カケハシは、「日本の医療体験を、しなやかに。」をミッションに掲げ、未来の医療の基盤となるエコシステムの創出を目指すヘルステックスタートアップです。2017年にスタートしたクラウド型電子薬歴・服薬指導ツール「Musubi」をはじめ、薬局向けのプロダクトを複数開発・提供し、グループ全体で日本の薬局の20％超、全国14,000店舗超をカバーしています。近年の薬機法改正や診療報酬改定等で問われる”薬局の次世代化”を推進する医療プラットフォームサービスとして選ばれるようになり、患者と薬剤師の関係性強化や服薬アドヒアランス向上、薬局経営改善の実例も多数寄せられています。

今後は、薬局向けサービスの拡充とともに、薬局とともに医薬品産業・医療産業全体へと視野を広げて、ヘルスケアの次世代化による医療課題解決に取り組んでいく方針です。具体的には、患者への介入・フォローによる治療・薬剤の価値最大化、処方薬に閉じない生活者の健康増進・QOL最大化実現のためのPHRの利活用、薬局・卸事業者・製薬メーカー等との連携による医薬品の流通最適化・供給安定化等を基本方針とします。デジタルテクノロジーを背景に多様なプレイヤーの相関を促進しながら、患者接点とデータを活用し健康増進、再発・重症化予防に貢献する、今までにない価値を生み出せる持続可能な医療プラットフォームの構築を加速することを目指します。

遺伝子・細胞治療の研究開発を行うサイト-ファクト、12億円の資金調達を実施

事業内容: 遺伝子・細胞製剤に特化したCMO・CDMO事業、品質試験の受託、遺伝子細胞製剤の製造コンサルティング

調達金額: 12億円

引受先: MPower Partners GP, Limited、富士フイルム、住友商事、旭化成

今後の展望: 商用製造体制の拡充とアジア展開の加速、製造DXの加速と自社製造基盤への実装展開

サイト-ファクトは、遺伝子・細胞製剤に特化し、受託開発製造事業、品質試験の受託、遺伝子細胞製剤の製造コンサルティングを行っているスタートアップです。前身の公益財団法人神戸医療産業都市推進機構時代にはB細胞性腫瘍の治療薬であるキムリア点滴静注の商用製造を手掛けるなど、国内における遺伝子・細胞治療の製造分野で先駆的な実績を持っています。2022年10月の設立以来、国内外の遺伝子細胞製剤のシーズにおける治験製造やプロセス開発での細胞加工施設の提供、QC試験の外注、各社へのコンサルティングなど、最新の細胞治療の開発を支えています。

サイト-ファクトは製造DXの推進にも注力しており、SaaSクラウド統合型遺伝子細胞製造管理システム「CytoFactory 4.0（CF4.0）」を2025年4月にローンチしました。CF4.0は、原材料・製造・試験・出荷管理を一元化し、製造全工程の電子化・データ化を実現するCDMO発のシステムで、SaaSクラウド上での統合により、柔軟かつ安価に導入でき、データ連携とセキュリティ管理の簡素化を可能にします。今後は、日本国内における商用製造の需要拡大に対応するため、既存施設の増強および新規施設の立ち上げを推進し、アジア諸国における遺伝子・細胞製剤の製造・供給拠点として機能する「国際的製造ハブ」としてのポジション確立を目指していきます。

住んだ日数分だけの家賃システム「リレント」を提供するUnito、約10億円の資金調達を実施

事業内容: 住んだ日数分だけの家賃システム「リレント」を活用したホテル・サービスアパートメントの企画・開発・運営、お部屋探しプラットフォーム「unito」の開発・運営

調達金額: 約10億円

引受先: アニマルスピリッツ、AGキャピタル、みずほキャピタル、田中渓氏、大東建託、エイチ・アイ・エス

今後の展望: 3年以内に500棟の運営体制構築、賃貸・宿泊・顧客情報の一元管理システム「unito PMS」開発、M&Aによる事業拡大

Unitoは、「暮らしの最適化の追求」をビジョンに掲げ、住んだ日数分だけの家賃システム「リレント」（特許取得済）を起点に事業を展開するスタートアップです。帰らない日は家賃がかからない住まい「unito」の企画・開発・運営を手掛け、2025年6月現在で会員数は7.7万人を突破、10社以上の不動産デベロッパー・オーナーとの協業により、運営物件数を121棟882室に拡大しています。リレントは、居住者が外泊する日をオンラインで申請すると、申請した日数に応じて家賃が減額される仕組みで、Unitoはリレントされた部屋をホテル・民泊として宿泊者に提供することで、「賃貸と宿泊の二毛作運営」を実現しています。

今回のシリーズDラウンドでは、「住まい」の提供で日本最大級の実績を誇る大東建託、「旅行・宿泊」のグローバルカンパニーであるエイチ・アイ・エスからセカンドクローズ出資を受けました。大東建託とは、同社が展開する遊休地活用事業との連携を視野に、ホテル運営の知見を活かした新たな不動産運用の提案を進めています。エイチ・アイ・エスとは、海外出張や多拠点滞在といったニーズを有する法人企業などに向けた「リレント」モデルの提案に加え、今後の海外展開においても協業を進めていく予定です。また、従来のPMSはホテル運営に特化しているものが多く、「賃貸」と「宿泊」の用途を切り替えるリレントに対応できるシステムがなかったため、賃貸や民泊にも最適化された新たなPMS「unito PMS」の開発も進めています。

国産SFAを展開するSALES GO、6.5億円の資金調達を実施

事業内容: SFA（顧客・営業管理システム）の開発・提供、営業戦略設計・インサイドセールス支援

調達金額: 6.5億円

引受先: ブロードリーフ

今後の展望: 国産SFA「SALES GO ISM」の開発加速、組織体制および採用力の強化、ブランド認知の拡大

SALES GOは、1,000社2,000商材の営業支援実績を背景に、先進7カ国最下位の日本の営業生産性を上げるという目的で設立されたスタートアップです。国内最新のSFA（顧客・営業管理システム）「SALES GO ISM」の開発・提供を中心に、営業戦略設計・インサイドセールス支援など、「売れる仕組みを作る」事業を展開しています。同社のSFAは、IT製品比較サイト「ITreview」に掲載されるSFA46製品の中で最新の機能を搭載しており、顧客ニーズに即した機能強化とUX（ユーザー体験）向上を推進することで、市場競争力を高めています。

今回調達した資金は、国産SFAとしての優位性を活かし、さらなる機能開発と市場シェア拡大に向けて活用される予定です。具体的には、開発体制や営業体制を拡充し、優秀な人材の獲得に積極的に投資することで、事業成長の基盤を固めていきます。また、国産SFAとしての優位性や実績を積極的に発信し、より多くの企業に「SALES GO ISM」の価値を届けるためのブランド認知拡大にも注力していく方針です。

まとめ

6月9日から6月13日のスタートアップ資金調達例をまとめました。

今週の資金調達ニュースからは、ヘルスケア、不動産テック、といった多様な分野で大型の資金調達が実現していることが見て取れます。特に注目すべきは、カケハシの約140億円という大型調達で、薬局のDXから医療産業全体のプラットフォーム構築へと事業領域を拡大していく姿勢が投資家から高く評価されています。また、サイト-ファクトのような先端医療分野でも、遺伝子・細胞治療の製造基盤構築という社会的意義の高い事業に対して積極的な投資が行われており、日本の医療産業の競争力強化に向けた動きが活発化しています。

もう一つの特徴として、事業会社からの戦略的投資が目立つ点が挙げられます。Unitoへの大東建託とエイチ・アイ・エスからの出資、SALES GOへのブロードリーフからの出資など、既存事業とのシナジーを見込んだ投資が増加しています。これは、スタートアップの革新的なビジネスモデルや技術が、大手企業の事業変革においても重要な役割を果たすようになってきたことを示しています。

「Plus Web3」では、今後も資金調達例を紹介してまいります。