【Week : 5/26-5/30】AI・ロボット分野に大型投資集中 スタートアップ資金調達リサーチ

5月最終週も、引き続き様々な分野で活躍するスタートアップ企業が資金調達を発表しました。
この記事では、5月26日から5月30日の間にリリースされた、スタートアップの資金調達ニュースをまとめています。さらに、各社の事業内容、調達金額、今後の展望について詳しく解説します。
エンジニアプラットフォームのファインディ、20.5億円の資金調達を実施
事業内容: ITエンジニア領域における個人・組織課題解決、転職サービス・フリーランス紹介・戦略支援SaaSの提供
調達金額: 20.5億円
引受先: JPインベストメント、LB Investment、Carbide Ventures、Darwin Venture Management、SMBCベンチャーキャピタル、ゼンリンフューチャーパートナーズ、インベストメントLab、オリックス、KDDI Open Innovation Fund 3号
今後の展望: プラットフォームの強化、グローバル進出本格化(韓国・台湾への拠点開設)、生成AI活用を推進するプロダクトの開発
ファインディは、「挑戦するエンジニアのプラットフォームをつくる。」というビジョンを掲げ、ITエンジニア領域における個人・組織それぞれの課題解決に取り組んでいます。現在は、IT/Webエンジニアの転職サービス「Findy」、ハイスキルなフリーランスエンジニア紹介サービス「Findy Freelance」、経営と開発現場をつなぐ戦略支援SaaS「Findy Team+」、開発ツールのレビューサイト「Findy Tools」、及びテックカンファレンスのプラットフォーム「Findy Conference」の5つのサービスを提供しています。
同社の主力プロダクトである「Findy Team+」は、開発データを意思決定に活かす戦略支援SaaSとして、2021年10月の正式リリース以降、約850社が導入しています。特許取得の独自技術を用いてGitHub、GitLab、Jiraなどの開発データを解析し、開発組織のパフォーマンスを国際的な指標に基づいて可視化・向上を支援しています。今回の資金調達により、2025年夏に韓国、来年を目途に台湾での拠点開設を目指し、2028年にはアジアでの導入企業1,600社を計画しています。

OMO事業や調理ロボットを手がけるNew Innovations 、11.6億円の資金調達を実施
事業内容: OMO事業の展開、全自動調理ロボットやスマートコーヒースタンドの開発・運営
調達金額: 11.6億円
引受先: 未来創生3号ファンド、ニッセイ・キャピタル、池田泉州キャピタル、FLAG-41、SBIインベストメント、グローバル・ブレイン、KDDI Open Innovation Fund 3号、三鬼紘太郎氏、HERO Impact Capital、DEEPCORE
今後の展望: OMO事業におけるプロダクトの量産・販路拡大、ソリューション提供にかかる組織強化、飲食・小売・宿泊の3領域での自動化・省人化にフォーカス
New Innovationsは、「人類を前に進め、人々を幸せにする」を理念に、オンラインとオフラインの境界線をなくし、顧客体験を向上させるマーケティング手法であるOMO(Online Merges with Offline)を主軸とする事業を展開しています。2018年に創業し、2021年にスマートコーヒースタンド「root C」をリリース。わずか一坪の空間で新たな顧客体験を創出し、商業施設をはじめ約20箇所で運営されています。2024年にはかき氷の全自動調理ロボット「Kakigori Maker」をリリースし、プロントコーポレーションや大阪・関西万博におけるサントリーの出展店舗などへの導入が進みました。
今回の資金調達と併せて、ハンバーガーの全自動調理ロボット「Burger Cooker」、店舗向け注文KIOSK端末・調理指示システムの統合ソリューション「Store Meister」を新プロダクトとして発表しました。これまでの飲食・小売を主な事業ドメインに加え、宿泊業の清掃・搬送業務についても研究開発を進め、新たにこの分野への進出を決定。日本のハードウェアの技術力にAIをはじめとするソフトウェアの構築力をかけ合わせ、顧客の課題を解決する「次世代メーカー」として産業全体の変革に取り組んでいます。

ライブコマース事業を展開するCellest、9.4億円の資金調達を実施
事業内容: ライブコマースのインフラ化、ライブコマース専門事務所の運営、ライブコマース専用ECモールアプリの開発・提供
調達金額: 9.4億円
引受先: 紀陽銀行、京都銀行、徳島大正銀行、日本政策金融公庫、北國銀行、みずほ銀行、三井住友銀行、三菱UFJ銀行
今後の展望: ライブコマース専用ECモールアプリ「WABE」の開発・運営、マーケティング活動の積極展開、事業成長に伴う人員・設備投資
Cellestは、「ライブコマースのインフラ化」を目指す大阪発のスタートアップ企業です。日本でライブコマースが始まった2017年から業界に参入し、2019年に創業しました。ライブコマーサー(配信者)のプロデュースとマネジメントを行うライブコマース専門事務所「セレスト」ではライブコマースチャンネル「ぞうねこちゃんねる」「アヒルのライブマーケット」を運営しており、複数のライブコマーサーが所属しています。
2025年4月に、2年に渡って開発を進めていたライブコマース専用のECモールアプリ「WABE」を正式にローンチしました。「WABE」を日本最大のライブコマースプラットフォームに成長させることを目指し、事業者がライブコマースを導入しやすい機能開発や、消費者が安心して買い物できるカスタマーサポート体制の強化に投資を行っています。2024年度の年間売上は前年比400%超を見込んでおり、今後も高い成長率を維持するため、ライブコマーサーおよびスタッフの採用・育成、ライブ配信スタジオを含むオフィスの移転・増床費用などに資金を充当する予定です。

Soneium上での新しいWeb3マーケティングプログラムを提供するNewLo株式会社、資金調達を実施
事業内容: Web3マーケティングプログラム開発・運営、Web3関連事業コンサルティング
調達金額: 非公開
引受先: mint startup fund2号投資事業有限責任組合、複数の国内投資家・事業会社
今後の展望: Web3キャンペーンプラットフォーム「NewLo Quest」の正式リリースに向けた開発体制の強化、マーケティング施策の拡充
NewLoは、ポイントプログラムをweb3トークンでアップグレードしたサービスを開発するスタートアップです。Sony Block Solutions Labsが運営する「Soneium」によるインキュベーションプログラムSoneium Sparkに採択されており、Soneium上での展開を予定しています。国境を越えた分散型インセンティブマーケティングインフラを構築し、それに特化したトークンを、日本およびグローバルアジア10億人のユーザーへ提供することを目指しています。
同社のサービスは、Web3キャンペーンプラットフォームである「NewLo Quest」、既存のポイ活ユーザーがポイントとWeb3トークンを交換できる「NewLo Point Exchange」などのサービスと上場を計画しているサービス上の基軸暗号資産「NewLoトークン(NWLT)」で構成されています。Web3領域での開発実績や運用経験に加え、暗号資産や電子マネー、ポイント制度に関する制度・規制の知見を有する専門人材を擁しており、法制度対応を前提としたサービス設計に取り組んでいます。今回の資金調達により、近日中に公開されるα版を通じ様々なフィードバックを盛り込んだβ版、そして正式版と段階を踏んだ開発を進めていきます。

行動科学AIのGodot、11億円の資金調達を実施
事業内容: 行動科学とAIを融合したディープテック開発
調達金額: 11億円
引受先: Dawn Capital、アシックス・ベンチャーズ、みなとキャピタル、モバイル・インターネットキャピタル、JA三井リース、日本政策金融公庫
今後の展望: 「信頼できるAI」開発・推進の強化、行動科学AIによる個人・組織・社会の変革をグローバルに推進
Godotは、行動科学とAIを組み合わせたソリューションを提供するディープテック企業です。2022年7月に創業し、特許技術を活かした独自の行動科学AIにより、社会課題解決に寄与する多様なソリューションを提供しています。これまでに、予防医療の促進や企業における従業員エンゲージメント向上、自治体と連携した行動公共政策の推進などに実績を残し、神戸を拠点に2023年にはオーストリア・ウィーンに研究開発拠点を開設するなど、グローバルに事業を拡大しています。
同社は今年4月に日本で初めて、AI特化型国際規格ISO/IEC 42001(AIマネジメントシステム)認証を取得しました。AI技術の開発や実装において、透明性・安全性・説明可能性を重視し、「信頼できるAI」の実現に取り組んでいます。現在では、グローバル企業グループや地域を丸ごと行動科学AIで改善するような大きな取組みに挑戦しており、現実世界を拡張するAIシミュレーションや、AIで組織づくりを抜本的に進化させる「AI-augmented workflows」や「AI-native workflows」の構築などの実装を進めています。

まとめ
5月26日から5月30日のスタートアップ資金調達例をまとめました。
今週の資金調達では、AI・DX分野を中心とした技術系スタートアップの大型調達が目立ちました。特に、ファインディの20.5億円やGodotの11億円といった二桁億円規模の調達が実現しており、エンジニア支援や行動科学AIといった専門性の高い領域への投資家の関心の高さが窺えます。また、ファインディのアジア進出やNewLoのWeb3マーケティングなど、グローバル展開を見据えた事業戦略を持つ企業への投資が活発になっています。
一方で、New InnovationsやCellestのように、実際の社会課題解決に直結するハードウェア・サービス企業への支援も充実しており、特にCellestは複数の金融機関からのデットファイナンスという形で資金調達を実現するなど、多様な資金調達手法が活用されています。これらの動きは、投資家がより実用性と収益性を重視し、社会実装の可能性が高いスタートアップを積極的に支援している傾向を示しており、日本のスタートアップエコシステムの成熟度向上を物語っています。
「Plus Web3」では、今後も資金調達例を紹介してまいります。