2026年10月1日、国内のNTTドコモは、スマートフォンの画面操作や位置情報などの利用状況から睡眠の質を推定する「睡眠の質推定AI」の提供を開始した。同AIは専用機器を必要とせず、日常的なスマートフォン利用から睡眠状態を把握できる。自治体や企業向けのヘルスケアサービスにも採用されており、健康管理の手軽さを高める技術として展開が進む。
スマホの利用ログから睡眠の質を推定
同AIは、利用者の同意を得たうえで、スマートフォンに蓄積された画面操作や位置情報などのデータを分析する。睡眠時間や日中の活動状況、夜間のスマートフォン利用傾向に加え、年齢などの属性情報も考慮し、前夜の睡眠の質を推定する仕組みだ。
特徴は、臨床現場で用いられる医学的な睡眠評価尺度に基づいている点にある。起床時のすっきり感や睡眠による疲労回復感などを推定し、スコアとして可視化する。さらに、睡眠時間のばらつきや夜間のスマートフォン利用といった、スコアに影響する生活習慣も分析し、個人の状況に応じた改善アドバイスを提供する。
さらに、ウェアラブルデバイスのデータを併用すれば、スマートフォンの利用状況だけで推定する場合と比べ、睡眠時間に関するデータの精度も高められる。
また、同AIはドコモの「HealthTech基盤」に新機能として実装され、各種APIとの連携にも対応する。NTTドコモビジネスの自治体・企業向けサービス「けんこうマイレージ」にも採用され、東京都武蔵村山市の健康ポイント事業「ムサムLife」では、10月26日から市民への推定結果の提供が始まった。
健康管理の裾野拡大へ 手軽さと推定精度が鍵
従来、睡眠の質を把握するにはウェアラブルデバイスなどの専用機器や、アンケートへの回答が必要となるケースがあった。こうした準備の負担を軽減できる同AIは、健康管理に取り組むきっかけを増やす可能性がある。特に自治体や企業、健康保険組合にとっては、専用機器の配布や利用開始時の手続きを抑えながら、幅広い対象者に健康支援を提供できる点が利点となる。
一方、スマートフォンの利用状況から推定する以上、実際の睡眠状態を直接測定するものではない。生活習慣や端末の使用状況によって推定結果が左右される可能性もあり、スコアを医学的な診断と混同しないための配慮が求められる。また、画面操作や位置情報などを扱うため、利用者の同意取得やデータの適切な管理も重要だ。
今後、ドコモがHealthTech基盤を通じて導入先を広げられれば、日常生活に溶け込んだ健康管理サービスの普及につながると考えられる。手軽さを強みに利用者を増やせるかに加え、推定精度への信頼とプライバシー保護を両立できるかが、事業拡大の鍵となる。