2026年7月21日、日本の全日本空輸(ANA)と東京大学発スタートアップのR&Dは、AIを活用した運航乗務員のスケジュール自動作成システム「AIS」の本格運用開始を発表した。約4年間の概念実証を経て実用化され、約2,000人分の勤務表作成を数週間から数時間へ短縮し、年間6,300時間の業務削減を見込んでいる。
AIが勤務表作成を数時間で自動化
運航乗務員の勤務表は、乗務資格や航空法規、社内規程、疲労リスク管理(FRM)(※)、休暇希望など数万通りに及ぶ条件を同時に満たす必要があり、航空会社の中でも特に複雑な業務とされてきた。ANAでは約2,000人分の勤務表を担当者が毎月手作業で作成しており、高い専門性と膨大な工数が求められていた。
こうした課題を受け、ANAは2021年からAIや数理最適化技術を強みとするR&Dと共同開発を開始した。約4年間の概念実証(PoC)を経て、運航乗務員のスケジュール自動作成システム「AIS」を構築し、2026年4月から本格運用している。
AISは航空法規や資格要件などの制約条件を自動で確認し、条件を満たした勤務表を短時間で生成する。また、従来は担当者の経験に頼っていた勤務の平準化や疲労への配慮もアルゴリズムへ組み込み、品質向上を図った。これまで数週間かかっていた作業は数時間で完了するようになり、年間約6,300時間の工数削減を見込む。AIが定型業務を担い、人が例外対応や最終調整を行うハイブリッド運用も特徴となっている。
※ FRM(疲労リスク管理): 運航乗務員の疲労を科学的に管理し、安全運航を維持するための国際的な管理手法。
航空DXのモデルとなる可能性と課題
今回の取り組みは、AIによる単純な業務効率化にとどまらず、熟練担当者のノウハウをデジタル化した点に大きな意義があると考えられる。経験に依存していた業務を標準化できれば、人材不足への対応や技術継承を進めやすくなり、航空業界全体の生産性向上につながる可能性もある。
また、同様に複雑なシフト管理を行う鉄道や物流、医療などの業界へ応用が広がることも期待される。AIによる数理最適化は、現場の負担軽減や働き方改革を支える有力な選択肢の一つとなる可能性がある。
一方で、安全性が最優先となる航空業界では、AIの判断を過信しない運用が重要になるとみられる。突発的な運航変更や個別事情への対応では、引き続き人による判断が求められる場面もあると考えられるため、最終責任を担う現場との適切な役割分担が欠かせない。今後はAIと人が協調する運用モデルがどこまで定着するかが、企業DXの成果を左右する要素の一つになる可能性がある。
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