国連の専門機関である国際電気通信連合(ITU)は、AIエージェントの信頼性とデジタルアイデンティティに関する国際標準の策定に向けた新たな作業部会を設置すると発表した。自律型AIの普及を見据え、安全かつ責任ある運用基盤の整備を目指す。
ITU、自律型AIの信頼性確保へ国際標準策定を開始
ITUは2026年7月9日、AI for Good Global Summitにて、「Trust and Identity for Humans and Agentic AI Focus Group」の設立を発表した。
AIエージェントが人間に代わって交渉、取引、意思決定などを担う時代を見据え、AIの信頼性とデジタルアイデンティティ(※)を支える国際的な枠組みを整備することが目的である。
作業部会では、AIエージェントの本人確認や相互認証、信頼性の評価基準、ライフサイクル全体を通じた保証モデル、デジタル認証情報の相互運用性、継続的なセキュリティ評価の基準、専門家コミュニティ間で行動を調整するための標準化ロードマップなどを策定する。
また、金融取引や重要インフラの運用といった分野においては、人間による制御を維持するためのフレームワーク開発を行うことも掲げられた。
ITUのドリーン・ボグダン=マーティン事務総長は「AIの未来は信頼にかかっている」と述べ、産業界や政府、学術機関、市民社会が協力して信頼性の高いAI基盤を構築する必要性を強調した。
作業部会は2026年11月にパリで初会合、2027年1月にジュネーブで第2回会合を開催する予定だ。
※デジタルアイデンティティ:オンライン上で個人や組織、AIエージェントの正当性を証明するための識別・認証の仕組み。安全なデジタル取引やアクセス管理の基盤となる。
国際標準化で普及を後押し 合意形成や運用には課題も
AIエージェントの国際標準が整備されれば、異なる企業や国のシステム間でも安全に認証や情報連携を行いやすくなり、金融や行政、医療など幅広い分野での活用が加速する可能性がある。
共通ルールが整うことで、企業がAIサービスを国際展開しやすくなる点も大きなメリットだろう。
一方で、各国の法制度やプライバシー保護、セキュリティ基準には違いがあるため、国際的な合意形成には時間を要することが予想される。
また、AI技術は急速に進歩しているため、策定した標準を継続的に更新できる体制も不可欠となるはずだ。
今後、AIエージェントが契約や決済、交渉など社会的責任を伴う業務を担う場面はさらに増えるとみられる。その際、「誰が行動したのか」「そのAIをどこまで信頼できるのか」を共通の基準で証明できる環境は不可欠となるだろう。
今回のITUの取り組みは、安全なAI活用を支える国際基盤として重要な役割を果たすことになりそうだ。
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