2026年6月18日、日本対がん協会は、全国のがん患者と家族を対象に実施した生成AI利用実態調査の結果を公表した。がん患者本人の6.7%、家族の7.5%が生成AIを情報収集や相談に活用している一方、利用者の約3分の2が誤情報を経験しており、利便性と信頼性の両立が新たな課題として浮かび上がった。
がん患者の生成AI利用広がる 治療初期ほど活用傾向
公益財団法人日本対がん協会は、2026年3月に全国のがん患者や家族約1万人を対象としたインターネット調査を実施した。その結果、生成AIの利用率はがん患者本人で6.7%、家族で7.5%となり、30代で最も高い水準を示した。
利用目的では、「がん治療に関する情報」が62.9%で最多となり、「症状・副作用・後遺症のこと」が60.6%で続いた。生成AIに期待する役割としては、「情報を分かりやすく説明・要約・比較検討してくれる」が62.4%と最も高く、複雑な医療情報を整理する補助ツールとして利用されている実態が明らかになった。
利用理由では「すぐに調べられる」「無料で利用できる」といった利便性が上位を占めた。一方で、利用しない理由には「医学的に信頼できるか不安」「医療機関の説明と異なる可能性がある」といった回答が多く、正確性への懸念が根強いことも分かった。
また、治療期間別にみると、診断後3カ月未満の患者で利用率が高い傾向が確認された。診断直後は病気や治療方針に関する情報ニーズが急増する時期であり、生成AIが新たな情報取得手段として選ばれている可能性がある。
理解促進に貢献する一方、医療判断への影響に警戒感
今回の調査では、生成AI利用者の66.2%が「情報が誤っていると感じた経験がある」と回答した。「質問の仕方によって回答が変わる」「助言を試したが期待した結果にならなかった」といった声も寄せられており、医療情報分野における生成AIの限界が浮き彫りになった。
その一方で、利用者の約7割はポジティブな影響を実感している。具体的には、「病気や治療への理解が深まった」「受診前の準備がしやすくなった」といった回答が多く、不安軽減や医師とのコミュニケーション改善につながったケースも確認された。
慶應義塾大学医学部の宮田裕章教授は、利用率そのものは高く見えないものの、がん患者や家族が実際に生成AIを活用している事実自体が重要だと指摘する。特に診断直後の患者については、不安が大きい時期だからこそAIの影響力も強くなり、誤った情報が治療方針の判断をゆがめるリスクがあると警鐘を鳴らした。
生成AIは今後さらに普及し、医療情報へのアクセス手段として存在感を高めると考えられる。しかし、専門家による診断や助言を代替するものではない。患者や家族がAIの利便性を活用しながらも、最終的には医療従事者や公的機関の情報を確認する姿勢が一層重要になると言えそうだ。