DUNLOPを展開する住友ゴム工業と富士通は、AIを活用したタイヤ構造解析の実証実験で成果を確認したと発表した。
従来約45分かかっていた解析を約5分に短縮し2027年4月の実運用開始を目指す。
AIでタイヤ構造解析を高速化
2026年6月3日、DUNLOPと富士通は、タイヤの性能を高精度かつ短時間で予測する「AIサロゲートモデル(※)」を共同開発したことを発表した。
今回の実証実験では、タイヤが路面に接地した際の変形挙動を対象に、従来約45分かかっていた解析を約5分で近似解析できることを確認した。
解析時間は約90%削減された形だ。
背景には、タイヤ設計におけるCAE解析の負荷増大がある。
タイヤの性能や安全性を評価するうえで、高精度なシミュレーションの重要性は高まっている。
一方で、メッシュを細かくして解析精度を高めるほど計算時間や開発コストは増え、熟練した技術者の知見も必要になる。
両社は、過去に蓄積されたFEM解析結果を学習データとして活用し、グラフニューラルネットワークをベースにしたAIサロゲートモデルを開発した。
実証では約60万要素規模の解析を実現し、タイヤと路面の接地形状について、FEM解析と比較して平均87.7%の精度で予測できたという。
今回の成果をもとに、両社はタイヤ設計の開発支援ツールの開発を進める。
DUNLOPは2027年4月の実運用開始を目指し、より安全性が高く、環境性能に優れたタイヤをスピーディーに市場へ供給する方針だ。
両社は今後、富士通の次世代CPU「FUJITSU-MONAKA」の検証機で実証を進め、推論速度や電力効率の最適化も目指す。
※AIサロゲートモデル:複雑なシミュレーションや数値解析の結果をAIで近似的に予測するモデル。
開発高速化と安全性検証の両立が焦点に
今回の取り組みのメリットは、タイヤ開発における解析時間を大幅に短縮し、設計判断のスピードを高められる点にある。
従来約45分かかっていたFEM解析を約5分で近似解析できたことで、試作前の検証回数を増やしやすくなると考えられる。
複数の構造案や材料条件を短時間で比較できれば、安全性や環境性能を高める設計改善にもつながりそうだ。
開発期間の短縮だけでなく、計算コストや技術者の負担軽減にも寄与するとみられる。
一方で、AIによる近似解析には慎重な運用も求められそうだ。
AIサロゲートモデルは過去のFEM解析結果を学習して予測する仕組みであり、すべての設計条件で同じ精度を保証できるとは限らない。
特にタイヤは安全性に直結する製品であるため、AIの予測結果をそのまま採用するのではなく、従来解析や実機評価と組み合わせた検証が重要になると考えられる。
適用範囲が広がるほど、学習データの質や予測誤差への対応も一段と問われるだろう。
今後の焦点は、今回確認された高速化と予測精度を、実際の開発現場でどこまで安定して再現できるかにあるとみられる。
実運用開始までには、モデルの適用範囲や検証手順を明確にすることが求められそうだ。
富士通の次世代CPU「FUJITSU-MONAKA」の検証機で推論速度や電力効率の最適化が進めば、AI解析を実務に組み込みやすくなるだろう。
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