米ウェイモが自動運転向けにデータ収集を開始、都内で車両公開 日本市場参入へ現地最適化を加速

2025年4月10日、米ウェイモが、自動運転のためにデータを収集する車両を東京都内で公開した。都市環境におけるデータ収集は来週から開始する予定だ。
日本市場特有の交通文化を反映、自動運転アルゴリズムの精度向上を目指す
ウェイモは、Googleの親会社アルファベット傘下の自動運転技術企業だ。
米国を中心に試験運用を拡大しており、ロサンゼルスなど一部の都市では無人タクシーの商業運転も実施されている。
今回、日本でのデータ収集という新たな一手に踏み切った背景には、アジア市場進出への本格的な準備があるとみられる。
公開された車両は、英ジャガー・ランドローバーの電気自動車(EV)だ。車両の前後や上部に高速回転するレーザーセンサー「LiDAR(ライダー)」やレーダーを備えており、道路周辺の障害物などのデータを取得する。
来週にも港区、新宿区、渋谷区、千代田区、中央区、品川区、江東区で25台が走行。日本交通の運転手がデータ収集のために運転するという。
将来は運転手が乗って緊急時に操作できる状態での自動運転「レベル3」に移行し、無人での自動運転「レベル4」での商用運転も視野に入れるとのことだ。
東京都内での走行が持つ意味は大きい。
複雑な交差点構造、右左折が入り組む道路、歩行者と車両が混在する狭い道など、日本の都市部には欧米とは異なる特有の交通文化とインフラが存在する。
ウェイモは、こうした要素を含む環境でのデータを蓄積し、より地域に即したアルゴリズム開発を進めていく狙いと考えられる。
AI・モビリティ産業の交差点に立つウェイモ、都市交通の再構築を視野に
ウェイモの日本進出は、単なる海外展開にとどまらず、都市交通全体の再設計にもつながる可能性がある。
自動運転技術は、交通事故の減少や渋滞緩和、高齢者・障がい者の移動支援といった社会的課題の解決策としても期待されており、日本のように高齢化が進む社会においては特に有効性が高い。
また、データドリブンな開発体制を敷くウェイモにとって、都市のリアルな挙動を解析することは、ビジネスモデルの最適化にも直結する。
無人タクシー運行に必要な法整備、地域社会との共存、サービスの価格設定といった多角的な要素に対し、データを根拠とした戦略が構築できるためだ。
とはいえ、日本市場特有の規制や文化的な受容性の問題も軽視できない。
自動運転車が一般車両と共存する上でのルール整備が課題となる。
今後の展開では、こうした課題への対応力が企業の競争優位を左右すると言えるだろう。
技術革新の中心にある自動運転領域において、ウェイモの動きは世界のモビリティビジネスの方向性を示すバロメーターとなる可能性が高い。