「Web3×教育」入門|活用方法・メリットを初心者にも分かりやすく解説

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現在、日本は急速に教育のデジタル化・ICT化を進めています。

2019年には、文部科学省が「GIGAスクール構想(Global and Innovation Gateway for All)」を打ち出し、児童生徒1人に対して1台の端末整備を目指すなどの動きがあります。そうした動きは新型コロナ感染症拡大を機に、さらに加速しています。

現実環境に左右されない平等な教育を提供するため、そして世界的なデジタル社会化の潮流に後れを取らないために、教育現場におけるデジタル技術活用の重要度が増しています。

ここ数年で注目度が高まってきている「Web3」は、より効率的かつ革新的な教育に寄与する最先端デジタル技術です。

本記事では、教育業界でのWeb3の活用方法や将来展望をまとめ、「Web3×教育」のメリットを初心者にも分かりやすく解説します。

目次

「Web3」とは

最先端デジタル技術として注目されている「Web3」を簡単に説明します。

Web3とは、端的にまとめると「データを分散管理するインターネットの仕組み」です。

ブロックチェーンというデジタル技術を用いることにより、限られた中央組織を介することなく、真正性や透明性が担保されたデータの管理を各個人が行えます。

Web3関連技術には、「メタバース」、「NFT」、「DAO」などがあります。それらは、本記事内で取り上げた際、簡単に説明します。

Web3について、詳しくは以下の記事をご参照ください。

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教育業界でのWeb3活用方法

それでは、事例を踏まえながら、教育業界でどういったWeb3活用方法があるのかを紹介します。

メタバース教育

教育業界におけるWeb3活用方法には、「メタバース」を用いた教育があります。

「メタバース」とは、ネット上に構築された3次元の仮想空間のことです。ユーザーは自分の「アバター」をメタバース空間で操作して、現実世界と同様に他者と交流できます。

2024年1月には、通信制高校・勇志国際高等学校にて、メタバース上でカリキュラムをこなすことで高校卒業資格を取得できる「メタバース生」の募集が始まりました。居住地を問わず、日本や海外どこからでもこのプログラムで学ぶことが可能となっています。

日本初の取り組みとなる、この「メタバース生」のカリキュラムでは、生徒は自身のアバターをメタバース空間で操作して他者との交流を楽しめます。

引用元:プレスリリース

容姿にコンプレックスがあり、オフラインでの学校生活が難しい生徒でも、不安を感じず学業に取り組めることが期待されます。

授業に関しては、勇志国際高等学校が30年以上の教育活動で蓄えたノウハウをもとに開発した学習アプリ「you-net DX」を用いて、生徒一人一人の能力・ニーズに合わせたオンライン講座を提供しています。

関連リンク:勇志国際高等学校 メタバース生募集ページ https://www.yushi-kokusaimetasei.com/

NFT証明書

Web3関連技術の一つである「NFT」を、教育業界の「証明書」に活用する方法があります。

「NFT」とは、「Non-Fungible Token(非代替性トークン)」の略称です。偽造・改ざんが不可能で、唯一無二であることが証明されているデジタルデータを指し、特に「画像」のデジタルデータを用いたNFTが多いです。

千葉工業大学は、2022年度の卒業・修了生向けに「NFT学位証明書」を発行しました。

左:NFT学位証明書/右:VCの学位証明書

引用元:プレスリリース

NFTは「偽造」や「改ざん」が不可能で、所有者が明確化されている特徴を持つため、就職活動などの際に自分の経歴を証明するうえで最適です。

千葉工業大学の学位証明書には、NFTだけでなく「VC」も用いられており、個人情報の保護や、他人の流用防止の工夫がなされています。

「VC」とは、「Verifiable Credentials(検証可能な資格情報)」の略称です。デジタル上で、資格や経歴などが証明できるデータを指します。NFTと似ている仕組みですが、VCは他人への譲渡不可である点が大きな違いです。

その他にも千葉工業大学は、「web3概論」という講座にて、単位を修得した履修生に対し、NFTとVCを活用した「デジタル学修歴証明書」を発行しています。

実際、この「デジタル学習歴証明書」を提示することで、Web3関連のインターンシップ参加につながった例もあります。

関連リンク:

Learn to Earn

教育業界では、「Learn to Earn」というWeb3活用方法があります。

「Learn to Earn」とは、「学ぶことでトークンを稼ぐ」という意味です。ユーザーがプラットフォーム上で学習することで、その結果に応じたトークンを取得できる仕組みです。

代表的な「Learn to Earn」アプリに「LetMeSpeak」という英語学習プラットフォームがあります。

引用元:LetMeSpeak 公式サイト

「LetMeSpeak」では、ゲーム形式の学習を通して英語の理解度を高めることができます。ゲーム内タスクの完成度に応じて報酬を獲得でき、それをトークンに変換することで、現実社会の買い物に使えます。

学習には、NFTキャラクターを使用します。NFTキャラクターは無料で取得することもできますが、有料で購入するレアなキャラクターほど稼げるトークン量も増加します。

引用元:LetMeSpeak 公式マーケットプレイス

教育に「Learn to Earn」を用いるメリットには以下があります。

  • 学びながら、稼ぐこともできる
  • トークン取得が、学習意欲を維持させるためのインセンティブ(対象のやる気を引き起こす動機付け)になる

関連リンク:LetMeSpeak 公式サイト

「Web3×教育」の将来展望

Web3は、様々な応用可能性を秘めた技術であることに加え、急速に変化・発展しているため、教育業界において今後のさらなる活用が見込まれます。そこで、「Web3×教育」の将来展望について考えます。

証明書NFT・VCのキャリアを通した継続活用

千葉工業大学の事例で挙げた「NFTやVCを用いた証明書」を、キャリアを通して継続的に蓄積していく活用法があります。

千葉工業大学のように、大学の講座を修了した証明、大学を卒業した証明だけでなく、例えば、A高校の卒業証明や、B資格の合格証明、社会人になって受講したC講座の受講証明などをNFT・VC化したデータを蓄積できるとします。すると、自分のキャリアを参照・提示する必要がある時に、Web3の技術で信頼性が担保された蓄積データを利用できます。

各教育機関や資格実施組織などに逐一連絡するファクトチェックの手間が省ける利点もあります。

「DAO」の活用

教育業界においては、Web3関連技術の一つ「DAO」を活用することができます。

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「DAO」とは、「Decentralized Autonomous Organisations(分散型自律組織)」の略称です。一部の人だけで意思決定するのではなく、参加者全員が意思決定に関わることを目指す組織運営の形態です。

DAOへの参加を証明する手段として、NFTが用いられることもあります。DAO内での意思決定(≒投票)では、その組織内のオリジナルトークン所有量(≒投票できる票数)が関わることが多いです。

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千葉工業大学が開講している講座「web3概論」では、DAOのような取り組みを導入しています。

同大学は小テストなどの結果に応じて、オリジナルトークンを受講者に付与しています。そのトークンを使用して投票を行う取り組みや、discord(オンラインコミュニケーションツール)を用いて、授業外でも学生同士で学びあえる環境作りを実施しています。

千葉工業大学のDAO的な取り組みをさらに拡張した将来展望としては以下が考えられます。

・受講者はトークン保有量による投票で、方針決定に大きく関与できる
  例)講座の内容・頻度・進行速度・担当講師など

・授業内だけではなく、授業外での活躍に応じても受講者にトークン付与
  例)自主的に勉強会を企画した人にトークン付与など

・DAOを活用している他の講座と比較して、よりトークン量が多い/トークン流動性が高い講座ほど、講師の待遇上昇

これらの取り組みを実施することによって、さらに質の高い教育を実現できるのではないでしょうか。

「Web3×教育」のメリット

活用方法や将来展望を踏まえて、教育業界にWeb3を用いるメリットをまとめます。

・表現力の拡大

・時間的・地理的な制約を受けない

・信頼性の高さ

・学習意欲の向上

・自主性の向上

表現力の拡大

Web3を教育に活用すると、表現できる幅が広がります。

デジタル技術を駆使することで、現実ではありえない事象や危険を伴う事象なども疑似的に体験することができます。

例えば、スタンフォード大学が開講している「Virtual People」という授業では、受講生はVRヘッドセットを用いてメタバース空間で講義を受けます。

この授業で人気なコンテンツとして、人種差別されている男性の人生をVRメタバースで体験することで、人種的な寛容さを学べるプログラムがあります。

このようにWeb3技術を活用すると、現実の枠を超えた学びが体現できます。

時間的・地理的な制約を受けない

Web3を活用すると、時間的制約や地理的制約なしで教育を受けられるメリットがあります。

Web3関連技術はすべてデジタル上で動作するため、地球上どこにいても教育を受ける機会があります。

従来の教育機関では24時間校舎を開放することは不可能ですが、メタバース空間を活用すれば、必要な時に必要なコミュニケーションをとることができます。

時間的・地理的な制約を受けないメリットは教育格差の解消にもつながるでしょう。

信頼性の高さ

Web3を教育業界に活用するメリットは、高い信頼性を担保できる点です。

NFT証明書の例で示したように、Web3関連技術を活用すると、真正性や透明性が高まり、信頼できるデータであることを証明することができます。

Web3を活用して信頼性を確保することで、虚偽申告のリスクやファクトチェックの時間を減らすことができます。

学習意欲の向上

教育にWeb3を活用することで、学習意欲を向上させることが期待できます。

Web3が学習意欲を向上させると考える3つの根拠を挙げます。

1つ目は、メタバースやDAOを活用することで、同じ目標を志す仲間作りができ、仲間との高めあいによる学習意欲の向上が見込めるためです。

2つ目は、「Learn to Earn」の例で挙げたように、学習者のトークン取得がインセンティブになるためです。

3つ目は、「DAO」の活用が講師の学びの姿勢向上につながるためです。

「DAO」の活用に関する将来展望で述べたような、DAOの評価と担当講師の待遇を紐づけることを考えます。

講師は自身の待遇を良くするためにDAOの有効活用や、DAO内で高評価を得られるような授業構成を考えるはずです。そうした講師自身の学習意欲向上も教育の重要な側面です。

以上の理由による「学習意欲の向上」は、教育業界全体としてプラスに作用するでしょう。

自主性の向上

Web3は教育業界における、生徒/学生の自主性を高めることに貢献します。

DAOでは参加者一人一人の意思表明が求められるため、従来のような「受動的学習」ではなく、物事を自分の身近なこととして捉える「能動的学習」につながります。

また、デジタル上では時間や場所に捕らわれない多様な選択ができるため、各個人は自分の意思でプログラムを選択する必要があります。

従来の教育業界では難しかった「生徒/学生の自主性向上」が、Web3を活用すれば実現に近づきます。

まとめ

現代は「多様性の時代」と言われているため、教育の形態も各個人の状況に合わせて多様化させるべきでしょう。多様な教育」を実現させるために一役買うのが「Web3」です。

Web3は振興デジタル技術であるため、前例はまだ少ないですが、教育現場での活用をぜひ一度検討してみてはいかがでしょうか。

本記事では、学校教育を中心に教育業界についてまとめましたが、社会人の教育についてもWeb3は多様な活用余地があります。

Web3人材の育成に関しては以下のインタビュー記事をご覧ください。

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