「全ての人が安心できるWeb3を」NFT詐欺防止プロジェクト “KEKKAI”
(アイキャッチ引用元:KEKKAI 結界 Handbook)
この記事では、NFT業界のエンドポイントセキュリティ向上のために活動するWeb3プロジェクト「KEKKAI」について解説します。
NFT界隈では、オンライン上での取引の複雑さや、各個人でのセキュリティ確保の難しさから、詐欺被害は年々増加しています。著名アーティストのアカウント乗っ取りや、偽Webサイトに誘導するフィッシング詐欺などには注意が必要です。
KEKKAIはNFT取引時に、リアルな取引シミュレーションの試行、警告文の表示などのサービスを提供しています。これらのサービスにより、フィッシング詐欺を防ぎ、セキュリティの大幅な改善が見込めます。
本記事では、KEKKAIのプロジェクト概要や、具体的なサービス内容、今後の展望を解説します。
KEKKAIとは?
KEKKAIの誕生
KEKKAIプロジェクトが誕生した背景には、「急拡大するWeb3・NFT市場に対して、セキュリティ面はユーザーが安心できる環境が整っていない」という問題意識があります。
KEKKAIが調査を始めた2022年は、Web3とNFTが高い市場成長率を記録し、「Crypto Ninja Partners」や「Murakami flower」を始めとした日本発のプロジェクトに対する海外市場からの期待感がありました。
KEKKAIが2022年に実施した調査によると、同年8月から11月における日本初NFTプロジェクトの取引量は111.11%の成長率を記録しています。「Crypto Ninja Partners」のNFT価格は、10月からの1か月間で1ETHから3.5ETHまで大幅に上昇しました。(参考:https://kekkai.io/handbook)
Web3やNFTに対するポジティブな状況がある反面で、市場ではフィッシング詐欺が横行しており、スキャムサイトが多く存在します。世界最大規模のNFTマーケットプレイス「OpenSea」でも、フィッシング詐欺によるNFT盗難への入念な注意喚起がされています(参考:https://support.opensea.io/en/articles/8867130-why-is-my-nft-marked-for-suspicious-activity)。
よって、KEKKAIは「全ての人が安心できるWeb3を」というビジョンを掲げ、スキャムサイトを利用したフィッシング詐欺や、悪意的なユーザーによる詐欺の被害を減らし、ユーザーが安心して取引できる市場を作るために、2023年1月に設立されました。
KEKKAIのサービス概要
KEKKAIはスキャムサイトやコントラクトのシミュレーションをブラウザ拡張機能で実施するサービスを提供しています。
具体的な機能説明は後述しますが、ウォレット上で資産の転送・売却を行う時に、買い手側へ権限付与するためのApprovalや、契約時のイーサリアム署名といった危険を伴う操作をKEKKAIは検査し、取引成立前に警告を表示します。
フィッシングによるNFT盗難詐欺の一般的な手口として、ユーザーをスキャムサイトにアクセスさせて契約締結し、権限付与した後に盗難するという流れがあります。KEKKAIはそのような詐欺を予防することが期待されています。
従来のNFT詐欺防止対策としては、NFT売買後の真贋判定サービスを利用したり、ユーザー個人が意識的にマルウェア対策をしたり、NFTマーケットプレイスの注意喚起を確認して怪しいサイトへのアクセスをしないように心がけることが主でした。一方、KEKKAIは個人の管理意識のみでは難しい場面で、未然の詐欺防止を促すシステムです。
KEKKAIが対応している危険操作の詳細は、以下に記載があります。
KEKKAI 結界 Handbook「KEKKAI対応詐欺種類」https://kekkai-official.gitbook.io/kekkai-handbook/support-sapto/kekkai-dui-ying-zha-qi-zhong-lei
KEKKAIの7つの機能
ここからは、KEKKAIにおける具体的な7つの機能を1つずつ解説します。
- 危険警告
- 取引シミュレーション
- コントラクトの認証
- ホワイトリスト
- NFTバリュエーション
- 通報機能
- Pause mode
1, 危険警告
「危険警告」とは、NFT取引時に取引相手が信頼できる相手かどうかを判断してユーザーに知らせる機能です。
一般的に、NFTを取引する際はNFTを譲渡・転送するために、ウォレットからトークンを転送する許可が購買者に付与されます。「危険警告」機能では、取引契約前に信頼できる契約者であるかを示すポップアップが表示されます。
上の画像のように、登録済みのアドレス(取引相手)が検出された場合は緑色、登録されていない新規のアドレス(取引相手)が検出された場合は赤色で、契約前の画面に警告文が表示されます。
この警告機能によって、アドレスの信頼度を確かめることができます。
2, 取引シミュレーション
「取引シミュレーション」とは、取引実行前にその取引内容をシミュレートし、手数料(ガス代)の予測を含めたコストを通知する機能です。
利用者自身では気づきにくい危険な取引(ガスレストランザクション、ハニーポットなど)がウォレット上で検出された場合、警告が表示されます。
この機能があることで、ウォレット内を透明化し、取引に潜む詐欺や危険にいち早く気づくことができます。
3, コントラクトの認証
「コントラクトの認証」とは、Webサイトやコントラクトアドレスが信頼できるかどうかを判断してユーザーに知らせる機能です。
この機能では、まず事前にコントラクトアドレスをKEKKAIに登録しておきます。そして、取引シミュレーションの際に、事前に登録されたWebサイトやコントラクトであれば上の画像のように緑色のロゴが表示され、認証されていないアドレスの場合は赤色で表示されます。
この機能は、スキャムサイトへの誘導防止や、認証コントラクトの安心利用に寄与します。
4, ホワイトリスト
「ホワイトリスト」とは、取引のユーザビリティ向上に役立つ機能です。
この機能では、ユーザー自身が信頼しているアドレス、コントラクト、サイトURLをリストに登録することで、1~3で挙げたシミュレーターを起動させないようにできます。既に信頼しているサイトで多くの取引をする場合には、登録しておくと便利です。
ホワイトリスト機能を用いてシミュレーター起動を省くことにより、安全性を保ちつつスピーディーな取引を実行することができます。
5, NFTバリュエーション
「NFTバリュエーション」とは、不正を働いている可能性が高い取引を事前に防止する機能です。
この機能は、NFTの価格をリアルタイムで自動認識します。その価格検証の結果、不自然に大きな値動きがあった場合には、不当取引の可能性が高いとして、予防するための警告が表示されます。
6, 通報機能
「通報機能」とは、ユーザー間の協力によってスキャムサイトを炙り出す機能です。
他の多くのWebサービスにあるように、KEKKAIプラグイン内にも、ユーザーが運営にスキャムサイトを通報できる機能があります。通報されたスキャムサイトは、他のユーザーがアクセスする時に「警告」として表示されます。
この機能によって、危険なサイトをより網羅的に検知することが可能になります。
7, Pause mode
「Pause mode」とは、シミュレーションが必要ない取引を実施する際に、全シミュレーションを一時的に停止する機能です。
アイコン下にある「Pause for 30 minutes(30 分間機能をオフにする)」ボタンを押すことでKEKKAIが一時的に停止し、全ての危険操作警告、トランザクションの結果、その他のポップアップウィンドウの表示が30分間停止されます。
30分経過するとバックグランドで操作が自動再開されますが、自分でボタンを再度押すことによって手動で操作再開することも可能です。
この機能は、安全性が犠牲にされる代わりに、迅速な取引実行に貢献します。
KEKKAIの利用環境
KEKKAIはマルチな環境に対応しています。現在は全ウォレット、約70種類のブロックチェーンに対応しているため、様々なシチュエーションでスキャム検出が可能です。
ブラウザはChrome、Edge、Brave、Firefoxに対応しており、対応言語は日本語と英語です。
幅広い利用環境に対応しているブラウザ拡張機能として、KEKKAIは汎用的なWeb3セキュリティシステムであると言えます。
今後の展望は?
結論から言うと、KEKKAIは今後のさらなる機能拡張や事業規模の拡大が見込めます。
以下では、KEKKAI創業以降の特徴的なニュースをプレスリリースをもとに時系列順でまとめます。
〇 2023年2月 5,000万円の資金調達を行い、組織体系のさらなる強化を促進
今後は資金調達の主な目的である組織体系の更なる強化を進めることで、KEKKAIモバイルアプリ版やWeb上のセキュリティダッシュボードの開発を進め、より多くのユーザーに安心できるWeb3体験を提供できるよう、より強固な体制を構築してまいります。並行して、事業者や開発者向けにKEKKAIの詐欺検出機能をパッケージ化しAPIとしてのリリースを進めております。
引用元:プレスリリース
これによってセキュリティ面を強化したい他のプロジェクトや、企業がKEKKAI同様に詐欺検出のアルゴリズムを使えるようすることで、業界全体のセキュリティ性向上に貢献してまいります。
〇 2023年6月 累計ダウンロード数1万を突破
株式会社KEKKAI(東京都新宿区)は同社が提供するWeb3ユーザー向けの詐欺防止ツールKEKKAIが全世界での累計ダウンロード数が1万を突破したことをお知らせいたします。今後もユーザーからのフィードバックをプロダクトに落とし込みながらWeb3でのセキュリティ体験の向上と、スマホ版の開発を進めてまいります。
引用元:プレスリリース
〇 2024年1月 2.3億円の資金調達を完了&Web3セキュリティ標準搭載ブラウザアプリ「KEKKAI Mobile」をリリース
サービスをさらに充実するものにするため、また、事業の拡大にあたって新たなメンバーの雇用機会創出のために今回の資金調達を実施いたしました。
KEKKAI Mobileは、今までになかったセキュリティ体験を提供する無料のWeb3ユーザー向けブラウザアプリです。個人のユーザーを暗号資産のハッキングや流出被害から守ることを目的としており、トランザクションの実行時や署名時にその内容を詳細にシミュレーション・分析し、その取引の内容やリスクをユーザーに通知します。
引用元:プレスリリース
〇 2024年3月 デロイト主催のビジネスコンテスト「NIPPON INNOVATION AWARD」にノミネートされ、「Uniforce賞」を受賞
Web3セキュリティを専門とする株式会社KEKKAIはこの度、今月2日に前橋市で開催された、地球をUPDATEするアイデアや技術を持つイノベーター個人や団体のビジネスアイデアを広く募集し表彰する「NIPPON INNOVATION AWARD」にて、2万件を超える応募の中からノミネートされ、企業賞である「Uniforce”ガバナンスグロース”賞」を受賞いたしました。
・Uniforce様からのコメント
引用元:プレスリリース
急拡大するWeb3市場において、国内市場だけではなくグローバル市場を支えていくサービスであることに感銘を受けました。
Uniforceは企業の成長フェーズに即したガバナンスの構築、KEKKAI様は成長市場を支えるセキュリティの構築。
事業領域は違いますが、世の中の健全な発展に貢献していきたいという想いを共有できると感じました。
ぜひ共に成長していきたいと考えております。
以上のプレスリリース記事からも分かるように、KEKKAIは創業以降、着実に規模や機能を拡大させ、Web3やNFTのセキュリティ領域において確かな地位を確立しています。現在の勢いを維持しつつ、KEKKAIは今後さらに発展していくでしょう。
まとめ
KEKKAIは日本初のWeb3セキュリティ会社であり、「誰もが安心できるWeb3を」というビジョンのもと、フィッシングやスキャム、詐欺被害からユーザーを守るサービスを提供しています。
Web3、およびNFT市場は非中央集権的であるため、セキュリティの確保を全て自分で行うことは難しいです。そのため、KEKKAIのようなセキュリティ会社はWeb3業界にとって重要な存在といえます。
KEKKAIをはじめとする会社や組織の取り組みの積み重ねが、詐欺被害の減少や、各個人の情報判断スキル向上につながります。そのようなWeb3環境の改善が初心者のNFT参入ハードルを下げ、将来的なWeb3業界活性化を促します。
関連リンク
- KEKKAI 結界 公式サイト https://kekkai.io/
- KEKKAI 結界 Handbook https://kekkai.io/handbook
- PR Times「株式会社KEKKAI」 https://prtimes.jp/main/html/searchrlp/company_id/115914
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