米国、UAEへのNVIDIA AI半導体輸出規制緩和を検討か AI技術と中東政策に変化の兆し

2025年5月2日、米国がアラブ首長国連邦(UAE)へのエヌビディア製AI半導体の輸出規制緩和を検討していると報じられた。トランプ大統領の中東訪問と連動した動きであり、両国の技術協力や経済連携に影響を与える可能性がある。
トランプ氏の中東訪問と規制見直しの動き、米UAE関係に新局面
関係者によると現在、米商務省とホワイトハウスでは、UAE向けのAI半導体に関する輸出規制を再検討する動きがあるという。
この議論の背景には、トランプ大統領の中東訪問がある。トランプ米大統領は5月13日から16日までの日程でUAEを含む複数の国を訪問する予定で、経済・安全保障分野での協力強化を模索しているとみられる。
現在の輸出規制は、バイデン前政権が導入した「AI拡散規則(先端AI半導体の輸出規制措置)」に基づくもので、UAEを含む約100カ国へのAI半導体輸出に上限を設けている。これは、中国などの対立国による先端技術の軍事転用を懸念した措置であったと考えられる。
しかし、UAEは米国からF35戦闘機の購入を許可された安全保障上のパートナーであり、こうした国に先端半導体を提供できない現状に対してトランプ氏は疑問を呈しているようだ。
技術競争の加速とリスク管理の狭間 規制緩和が意味する地政学的インパクト
米国とUAEは、防衛・エネルギー・テクノロジーの各分野で長年にわたり協力関係を築いてきたと考えられる。
エヌビディアのAI半導体は、クラウドインフラや都市インフラ、医療、気候シミュレーションなど多用途に活用されており、UAEとしても入手が切望されてきた製品だろう。緩和が実現すれば、米UAE間の技術的結びつきは一段と深まる可能性が高い。
仮にUAEへの半導体輸出緩和が決定すれば、他の中東諸国や同盟国にも同様の要求が広がる可能性もあるだろう。
米国はAI技術を通じて同盟国との協調を深め、同時に中国の影響力を封じ込めたい意図があると見られる。規制緩和がその一環として位置づけられるのであれば、今後のAIサプライチェーンにおいて米国主導の枠組み形成が加速する展開もあり得る。
一方で、先端半導体は軍事転用が容易であり、万が一にもUAE経由で意図しない国や組織へ技術が流出すれば、米国の安全保障政策に逆行する結果となりかねない。
さらに、今回の動きが政権交代にともなう外交方針のブレと受け取られれば、米国の規制政策そのものへの信頼低下を招く可能性もある考えられる。
短期的には経済や外交面での成果が期待される一方、今後は半導体輸出に関する管理体制の見直しや第三国への技術流出を防ぐ仕組みの整備が求められるだろう。
今後の決定次第では、他国からの同様の要請や国際的な輸出管理の枠組みにも影響を及ぼす可能性があり、各国の関係者がその動向を注視しているとみられる。