中国製AI、米国製との性能差が９.３％から１.７％まで縮まる

米スタンフォード大学は、2025年4月7日に発表したAIに関する年次報告書で、中国のAI性能が急速に進化し、米国製のAIに匹敵する性能を獲得しつつあると指摘した。
同報告書によると、性能差は2024年時点の9.3％からわずか1.7％にまで縮小した。

AI性能の差が急速に縮小、中国の台頭が鮮明に

報告書では、AI性能において米国が依然としてトップに立つ一方で、中国が猛追している事実が浮き彫りになった。
カリフォルニア大学バークレー校の研究チームが実施したベンチマーク評価によると、2024年1月の時点では米国製AIが中国製AIを9.3％上回っていたが、2025年2月にはその差が1.7％にまで縮まったという。
わずか1年余りでこれだけの差が埋まった背景には、中国国内におけるAI研究の質の向上と、実用を前提とした開発アプローチの転換があるとみられている。

AIモデルの開発数を比較すると、2024年には米国が40モデルを開発したのに対し、中国は15モデルにとどまっている。
米国ではOpenAIやGoogleが先行する一方、中国でもAlibabaやDeepSeekが独自技術を育成中である。
限られた数の中でも、汎用性や性能指標で高評価を獲得する中国製AIが増加している現状からも、技術の成熟度がうかがえる。

AIへの民間投資額では、依然として米国が圧倒している。2024年の投資額は1091億ドル（約16兆円）に達し、世界のAI開発をけん引している。
一方で、中国の投資額は93億ドルと、米国の10分の1以下にとどまっている。それでも性能差が急速に縮小したことは、リソースの使い方や投資戦略の違いを浮き彫りにしている。

同時に、AIの悪用問題も無視できない。2023年から2024年にかけて、世界中でAIの誤用や悪用による問題が急増し、件数は前年比56％増の233件に達した。
これはAIの高度化が進む一方で、倫理面や管理体制が追いついていないことを示している。

今後の展望

現時点で中国と米国のAI性能差が1.7％にまで縮小したというデータは、両国のAI競争が新たなフェーズに入ったことを示していると言える。
仮にこの傾向が続けば、2025年後半〜2026年にかけて性能面での逆転も視野に入る可能性があるだろう。

ただし、技術の成熟だけではなく、その活用範囲や社会実装力が問われる時代に入っている。性能指標だけでは語れない「信頼性」「倫理性」「持続可能性」といった観点が、AIの国際競争において重みを増していくだろう。

また、AI技術の進化により軍事や監視分野への応用リスクも高まるため、国際社会における規制・ガイドラインの整備が急務となる。開発の加速とともに、各国がどのようにリスクと向き合うかが、今後のAI技術の健全な発展を左右すると見られる。

結論として、米中のAI競争は技術力の優劣だけではなく、倫理・運用・国際協調の領域においても次なる主戦場へと移行していくと考えられる。