トランプ政権、AI半導体輸出規制を個別協定方式へ変更検討 各国との個別交渉推進か

現地時間2025年4月29日、ロイター通信が報じた関係者の証言によれば、トランプ政権はAI半導体の輸出規制において、バイデン政権が導入した3段階方式から、各国との二国間協定方式への変更を検討しているという。
この政策転換は、技術覇権をめぐる国際通商交渉に大きな影響を与える可能性がある。
3段階制からの転換、トランプ政権の通商戦略に直結 「国別対応」へと舵を切る狙い
トランプ政権が再検討しているのは、バイデン政権が2025年1月に導入したAI向け先端半導体の輸出規制制度だ。
この制度は2025年5月15日から順守が求められ、各国を3つのカテゴリーに分類することで、技術流出の管理を試みてきた。
第一のカテゴリーでは日本を含む17カ国と台湾に無制限の輸出を認め、第二のカテゴリーでは約120カ国に対し数量制限を設ける。第三のカテゴリーに該当する中国、ロシア、イラン、北朝鮮などには全面的な輸出禁止措置が敷かれている。
しかし、トランプ政権はこの「枠に当てはめる方式」を撤廃し、代わりに各国との個別協定にもとづいたライセンス方式の導入を検討している。
半導体技術を外交・通商交渉のカードとして明確に活用しようとする戦略の一環だ。
ウィルバー・ロス元商務長官は、「段階方式の廃止を推進する意見が政権内に存在する」と明かし、政府間の交渉による協定が現実味を帯びつつあることを示唆している。
また、ラトニック現商務長官も3月の講演で「輸出管理措置を通商戦略に取り込む考え」を公言しており、現政権が国際交渉を前提とした規制運用に向かっている姿勢が鮮明になった。
ただ、ロイター通信によれば、今後方針が変わる可能性は残っているということだ。
個別協定方式のリスクとメリット
トランプ政権が模索する個別協定方式には、各国に対して柔軟な運用が可能になるという利点がある。
また、協定を二国間にすることで、より緊密に各国と交渉を行い、有利な条件を引き出そうという狙いもあるだろう。
一方で、政策の透明性や予測可能性が低下する懸念もある。
各国との交渉に時間を要するだけでなく、政治的思惑が色濃く反映される可能性があるため、企業側としてはビジネス判断の難易度が高まる恐れもある。
加えて、トランプ政権内では、小規模な半導体輸出に対する「免許不要枠」の縮小も検討対象に含まれており、これが実現すれば米国内企業の事務負担や輸出コストが増加する公算が大きい。
実施時期や具体的な協定内容についてはまだ議論段階にあるものの、今後の交渉の行方次第で世界の半導体市場に与える影響が変動する可能性は否定できないだろう。