トランプメディアが約3500億円調達 ビットコインを企業財務に活用

2025年5月30日、米トランプ・メディア・アンド・テクノロジー・グループ(TMTG)は、約50の機関投資家からの私募増資により24.4億ドル(約3500億円)の資金調達を完了したと発表した。手取り資金はビットコイン戦略と企業運営に充当され、同社は米国で最大級のビットコイン保有上場企業となる見通しである。
約3500億円を調達 戦略資産としてビットコインを導入
TMTGは「Truth Social」など複数のメディア・フィンテック事業を展開する企業であり、今回の資金調達は将来の成長に向けた大規模な布石となる。
同社は私募形式で約50の機関投資家を対象に増資を実施し、総額24.4億ドルの調達に成功。税引き後の手取り額は23.2億ドルにのぼる。
これにより、TMTGの流動資産は30億ドルを超える規模となり、今後は一部をビットコインに転換する方針を明らかにした。
CEO兼会長のデビン・ヌネス氏は、「優良資産の取得に注力しており、この取引により戦略実行の財務的自由を得る」とコメントしている。
すでに2025年第1四半期末時点で同社は7.59億ドルの現金・同等物を保有しており、今後はビットコインが財務諸表に計上される見込みだ。
TMTGはこの動きにより、ストラテジーやテスラに次ぐビットコイン保有企業の一角を占める可能性がある。
企業の財務に仮想通貨導入 期待とリスクが交錯
TMTGによるビットコイン導入は、従来の資産保有戦略に変化を促す象徴的な動きといえる。インフレ耐性や非中央集権性(※)を理由に、ビットコインは機関投資家から「デジタルゴールド」として注目されてきた。今回の決定は、保守層を中心に人気を集める同社のブランド戦略とも一致している。
しかし、ビットコインの価格変動性は依然として高く、企業の財務に不確実性をもたらすリスクもある。特に米国会計基準では暗号資産の減損処理が求められるため、時価の下落は損失計上につながる可能性がある。
加えて、規制の強化や税制の変化が企業価値に影響を与える懸念も無視できない。
一方で、ビットコインの導入がもたらす市場インパクトは大きい。投資家はTMTGの成長と暗号資産市場の相関を注視し、今後の株価動向にも注目が集まる。
財務戦略としてのビットコイン活用は、他の上場企業にも波及する可能性があり、企業経営における仮想通貨の役割が再定義される転機となりうる。
※非中央集権性:特定の国家や企業など中央管理者が存在せず、ネットワーク参加者全体で管理・運営される仕組みを指す。ブロックチェーン技術に基づく。