米防衛宇宙スタートアップTrue Anomalyが約375億円を調達 国家安全保障を支える次世代宇宙機技術に注目

米国の防衛宇宙スタートアップTrue Anomalyは、現地時間2025年4月30日、シリーズCラウンドにて2億6000万ドル(約375億円)の資金を調達したと発表した。
「Jackal」に込められた戦略性 国家安全保障と連動する宇宙防衛技術の進化
True Anomalyは2022年に米コロラド州で創業されたスタートアップで、米宇宙軍の戦術ニーズに特化した宇宙機とソフトウェアの開発を進めている。
今回発表された2億6000万ドルの資金調達は、Accelをリード投資家とし、Meritech Capital、Eclipse、Riot Ventures、Menlo Ventures、Naryaといった有力ベンチャーキャピタルが参加した。
この資金は、True Anomalyの中核技術である宇宙機「Jackal」の開発加速に充てられる。
「Jackal」は光学およびレーダーセンサーを搭載し、他の衛星に接近して高解像度画像を取得することが可能だ。
また、同社は宇宙での軍事シナリオを想定した訓練用ソフトウェアの開発も進めており、衛星運用や攻撃・防御を仮想空間で模擬可能にする環境を構築している。
今後は18カ月以内に4つの宇宙ミッションへの対応を見込んでおり、従業員数も現在の約170人から250人への増員を計画している。技術開発と人材拡充の両輪で、米国の宇宙防衛体制を支える体制が本格化しつつある。
宇宙防衛の迅速対応時代へ VICTUS HAZEと宇宙産業の地政学的インパクト
True Anomalyの動きの中でも特筆すべきは、米宇宙軍の「Tactically Responsive Space(TacRS)」におけるVICTUS HAZEプロジェクトへの関与だ。
この取り組みでは、Firefly Aerospaceとの提携により、打ち上げから運用までを迅速に実行できる体制を構築しつつある。契約額は3000万ドル(約43億円)とされ、国家レベルでの宇宙対応力強化を象徴するプロジェクトだ。
このような迅速対応型の宇宙ミッションは、軍事的な不測の事態や衛星攻撃への即応性を高めるものであり、従来の数カ月~数年単位のミッション準備とは一線を画すものだ。
特に中国やロシアなどの宇宙進出が加速する中、米国にとって宇宙における技術的優位性の確保は、戦略的に不可欠となっている。
宇宙産業自体も防衛分野との接続性が高まっており、政府機関と民間スタートアップの連携が加速している。これは軍事技術のスピンオフによるイノベーション促進という文脈だけでなく、地政学的リスクの中で経済的・技術的な自立性を確保する動きとも連動する。
今後は、こうした宇宙スタートアップの台頭により、より柔軟かつ高速な宇宙オペレーションが主流になる可能性が高い。
国家安全保障という枠を超えて、宇宙が戦略的インフラとなる未来も、そう遠くないのかもしれない。