TOPPAN、偽造防止技術で新技術 光を当てると立体絵が浮かぶ「イルミグラム」提供へ

TOPPANデジタルは2025年4月3日、強い光を当てることで立体的なカラー画像が浮かび上がる新技術「イルミグラム」の提供を開始すると発表した。
偽造防止の分野において、視覚効果と耐偽造性の双方で大きな進歩が期待できるという。
視覚性と偽造耐性を両立
TOPPANデジタルが新たに開発したカラー版イルミグラムは、これまでのホログラムとは一線を画す技術的進化を遂げている。
イルミグラム自体は2022年に単色版が初めて登場し、スマートフォンのライトを使って簡便に真贋判定ができる技術として注目を集めてきた。
今回のカラー版では、見る角度に関係なく同一の色が表示される「固定色」による潜像が実現され、より明確な真贋判定が可能となっている。
従来のホログラムは、見る角度によって色が変化する「虹色ホログラム」が主流であったが、視認性や精度に限界があり、像がぼやけてしまう問題があった。
これに対して固定色による表示は、意図しない色変化を抑制でき、偽造防止性能を高める効果があると考えられる。
また、この技術は単体での効果にとどまらず、TOPPANが展開している他の偽造防止技術「SecureColor」や「S-White」、「トワイライトグラム」などと組み合わせて多層的な真贋判定を可能にしている。
さらに、スマートフォンでIDを読み取る「ID-NEX」サービスとの連携にも対応しており、光学的な判定に加えてデジタル上での確認も並行して行える仕組みだ。
これにより、偽造品の流通が深刻な問題となっている市場において、一般消費者でも手軽かつ高精度に真正性を確かめる手段が提供されるようになる。
ターゲット市場と価格戦略から見る技術の広がり
イルミグラムの主な用途として想定されているのは、偽造リスクが高い業界における正規品確認の強化だ。
高級ブランド品や精密機械部品といった分野では、消費者保護や企業ブランドの信頼維持に直結する真贋判定技術が強く求められてきた。
カラー版イルミグラムは、100万枚以上の発注で1枚あたり7〜8円という価格帯に設定されている。単価としては高額ではないが、流通量が膨大な商品のラベルとして使用する場合は、コストがネックになりうるだろう。
そのため、視認性、耐偽造性、そして多層確認による安心感という価値を訴求することで、差別化を図る戦略だと思われる。
偽造防止技術の進化に伴い、模倣者側も技術的に高度な手法を用いてくる可能性は否めない。そのため、今後は光学技術単体ではなく、デジタル認証技術との併用が主流になることが予想される。
イルミグラムはまさにその先駆的存在であり、スマートフォンとの連携や複数技術の統合によって、技術的優位を保ちながら市場を広げていくものになると考えられる。
耐偽造性が社会的信頼に直結するこの分野において、TOPPANの新技術が市場の標準となるかどうかは、今後の導入実績とユーザーの評価に委ねられていると言えるだろう。