TMTGが米国発SNSに独自の仮想通貨とデジタルウォレット導入

2025年4月29日に公開された米トランプ・メディア・アンド・テクノロジー・グループ(TMTG)の株主向け書簡により、同社が独自の仮想通貨とデジタルウォレットをSNSプラットフォーム「Truth Social(トゥルー・ソーシャル)」に導入する計画が明らかとなった。
SNS発の仮想通貨戦略、TMTGが仕掛ける独自エコシステムの構築
TMTGはトランプ米大統領が設立した保守系メディア企業であり、同社が運営するTruth Socialは「言論の自由」を掲げるSNSとして2022年に米国で公開された。そのTruth Socialを軸に、同社は仮想通貨とデジタルウォレットの導入を進めている。
具体的には、Truthデジタルウォレット内にユーティリティトークン(※)を組み込む予定だ。このトークンはまずTruth+のサブスクリプション(定期購読)サービスの支払いに用いられ、その後エコシステム内の他製品・サービスへの活用が検討されている。
これにより、Truth Social内での決済や取引がスムーズになり、ユーザーの囲い込みが進む構図となる。
さらに書簡では、Truth Socialへの新規サブスクリプション機能の追加や、Truth+の広告とプレミアムコンテンツによる収益化計画も概説された。
またTMTGは、米大手取引所Crypto.comおよび資産運用会社Yorkville America Digitalと提携しており、フィンテックブランド「Truth.Fi」を通じて仮想通貨ベースのETFや新たな金融商品を市場に投入する構想だ。
昨年11月には、デジタルウォレット用のソフトウェアに関するサービスを含むTruth.Fiの商標出願を行っている。
※ユーティリティトークン:特定のサービスや商品にアクセスするためのデジタル通貨で、証券的価値は持たず、利用目的が明確に定められている。
仮想通貨市場での勝算は TMTGの展望と課題
TMTGの仮想通貨導入計画は、SNSという既存のユーザーベースを起点に、金融領域への事業拡大を目指すものである。これはWeb3時代のビジネスモデルとして注目に値する。
一方で、競合他社との差別化や規制環境への適応といった課題も浮かび上がっている。
現時点では、Crypto.comやYorkville America Digitalといった金融系プレイヤーとの提携により、仮想通貨ETFやその他の投資商品を展開する道筋は描かれている。しかし、これらが実際に市場に受け入れられるかは未知数である。
TMTGの強みは、すでにTruth Socialというプラットフォームを持ち、政治的に熱心な支持者層が存在している点だ。こうしたコミュニティに対してフィンテックサービスを提供することで、従来とは異なる形のロイヤルユーザー経済圏を生み出せる可能性がある。
今後、Truth.Fiブランドの成長が金融業界にもたらす影響と、TMTGがこの分野でどれだけ持続可能な収益モデルを築けるかが鍵となるだろう。