Tether、クラウド不要のAI基盤「QVAC」を近日公開 分散型AIエコシステムの構築を目指す

2025年5月14日、米ドル建てステーブルコインを発行するTether(テザー)社は、クラウドに依存せずローカルデバイスでAIを実行可能とする新基盤「クォンタムバースオートマティックコンピューター(QuantumVerse Automatic Computer:QVAC)」を近日公開予定であると発表した。
クラウド依存から脱却、QVACが提示する次世代AIの形
Tether社が公表したAI基盤「QVAC」は、クラウドサーバーへの依存を排除し、ユーザーの手元デバイスでAIアプリケーションを実行できる仕組みだ。
スマートフォンやノートPC、さらには組み込み機器やブレイン・コンピューター・インターフェースといった多様な環境を想定し、柔軟な運用が可能となる。
この基盤の特徴として、AI処理をローカル実行できることで、ユーザーはプライバシー保護と自律性の確保を両立できる点が挙げられる。
さらに、モジュール式アーキテクチャ(※1)を採用しており、必要な機能だけを組み合わせて導入できる。
また、QVACはP2P通信(※2)にも対応し、中央集権型インフラに依存せずにデバイス間の直接接続が可能だ。
テザー社の開発者向けツールキット「ウォレットデベロップメントキット(WDK)」を活用した支払い機能により、ビットコイン(BTC)やUSDTでの取引機能も統合され、AIエージェントが自律的に商取引を行える設計となっている。
パオロ・アルドイーノCEOは、「AIを使うのにAPIキーが必要なら、それは本当の意味で自分のAIとは言えない」と述べている。
QVAC活用アプリと開発者開放 Tetherが描く分散型AIの拡張戦略
QVACの発表と同時に、Tether社は「QVAC」を活用したAIアプリケーションを発表した。
オンデバイスでの高速翻訳と文字起こしを可能にする「QVAC/トランスレート」、プライバシーを重視した健康管理アプリ「QVAC/ヘルス」の2種をローンチする予定だ。
さらに、Tetherは開発者コミュニティへの積極的な開放も図っており、オープンソース形式でQVACのソフトウェア開発キット(SDK)を提供する計画だ。
QVACは、今後数年の間にWeb3領域における分散型AI基盤の一つとして、注目度を高める可能性がある。
特に、スマートデバイスやIoT、さらにはブレイン・コンピューター・インターフェースの領域では、エッジAIとの親和性が高く、Tether社の狙い通り、クラウド不要のAI活用が進展すると考えられる。
ただし、初期段階ではニッチなユースケースが中心になるとみられ、主流市場での普及には、さらなる省電力化、高速化、簡易化が求められるだろう。
※1 モジュール式アーキテクチャ:個々の独立した機能単位(モジュール)を組み合わせることで、システム全体を柔軟に構築・拡張できる設計手法である。
※2 P2P通信:中央サーバーを介さずにユーザー間で直接データをやり取りする通信方式。分散型ネットワーク構築に欠かせない要素である。