スペースX、初の極軌道有人飛行「フラム2号」の打ち上げ準備完了　3月31日実施へ

2025年3月23日、スペースXは初の極軌道有人飛行ミッション「フラム2号」の打ち上げ準備が整い、目標日を3月31日と発表した。

このミッションでは、宇宙船「クルードラゴン」Resilience号を使用し、地球の極地観測や大気現象「STEVE」の調査が計画されている。

フラム2号ミッションの概要とその意義

フラム2号は、地球の北極および南極を周回する初の有人宇宙飛行ミッションであり、スペースXが運用する。

このミッションでは、クルードラゴンResilience号が使用され、打ち上げはフロリダ州のケネディ宇宙センターから行われる予定だ。
ミッションの期間は3〜5日間で、軌道高度は425〜450km、軌道傾斜角は90度と計画されている。
これまでの有人宇宙飛行は主に低軌道で行われてきたが、フラム2号は極軌道を飛行することで、これまでにないデータの収集が期待されている。

ミッションの主な目的は、地球の極地観測と、大気現象「STEVE（Strong Thermal Emission Velocity Enhancement）」の調査である。
STEVEとは、オーロラとは異なる紫色や緑色の光のリボンとして観測される現象で、その発生メカニズムは完全には解明されていない。
このミッションを通じて、STEVEの詳細な観測が行われ、地球近傍の宇宙天気に関する理解が深まることが期待されている。

フラム2号のクルーは4名で構成され、全員が初の宇宙飛行となる。
ミッションコマンダーは、マルタ出身の起業家で冒険家のチュン・ワン氏。
ビークルコマンダー（機体の船長）を務めるのは、ノルウェーの映像作家であり撮影監督のヤニッケ・ミケルセン氏。
パイロットは、オーストラリアのプロフェッショナルな極地ガイドであるエリック・フィリップス氏。
ミッションスペシャリストは、ドイツ出身でロボティクス研究者のラベア・ロッゲ氏が担当する。

特にラベア・ロッゲ氏は、ベルリン生まれのロボティクス研究者で、ノルウェー科学技術大学（NTNU）で博士課程に在籍中。彼女は、極地環境でのロボットシステムに関する研究を行っており、その専門知識が今回のミッションで活かされることが期待されている。

クルーはカリフォルニア州のスペースX施設で訓練を完了し、打ち上げに向けた最終準備を進めている。

今後の展望

フラム2号の実施は、民間宇宙開発の新段階を示す象徴的な出来事と言える。
特に極軌道への挑戦は、有人飛行では前例がなく、地球観測の可能性を広げる一歩となる。

今後、極地観測に特化したミッションが継続されれば、気候変動や地球磁場に関する理解がさらに深まるだろう。

STEVEのような未解明の大気現象を研究することで、宇宙と地球の相互作用に関する新たな理論や予測モデルの構築が進展する可能性もある。

今回のミッションが成功すれば、スペースXがこの分野でも主導的立場を築くきっかけとなり、他の宇宙機関や民間企業にも大きな影響を与えると見られる。