Sonos、サウンドバー「Sonos Arc Ultra」にAIスピーチエンハンスメント機能を追加

Sonos（ソノス）は2025年5月13日、プレミアムサウンドバー「Sonos Arc Ultra」に、AIを活用したスピーチエンハンスメント機能を追加する無料アップデートを提供開始した。この機能は、セリフの聞き取りやすさを向上させ、テレビ視聴体験の質を大きく引き上げる。

AIによるリアルタイム音声解析で家庭でも劇場クオリティのセリフ体験を実現

Sonosが新たに提供を開始したスピーチエンハンスメント機能は、AI技術によってセンターチャンネルの音声をリアルタイムで解析し、映像作品のセリフを際立たせる音声明瞭化ソフトウェアツールである。
本機能はSonosアプリからワンタップで操作可能となっており、ユーザーは視聴中に即座に音声調整を行える設計となっている。

セリフの明瞭度は「Low」「Medium」「High」「Max」の4段階から選択でき、それぞれ強調の程度が異なる。「Low」では自然な範囲でセリフが浮かび上がり、「Max」ではセリフが音響全体の最優先項目として再生される。
背景音や効果音とのバランスを保ちつつ、セリフの聴き取りやすさを最大限に高める設計がなされている。

この機能は、英国の聴覚障害者支援団体RNIDとの共同開発により生まれた。開発には約1年を要し、異なる聴力特性を持つ37名による実地テストが行われた。
さらに、映画『マッドマックス 怒りのデス・ロード』などで知られるアカデミー賞受賞音響ミキサーのクリス・ジェンキンス氏が技術監修を務め、劇場での音響制御技術を家庭向け製品に応用するというユニークな取り組みも注目される。

視聴のバリアフリー化と没入感の両立　音響体験の未来を拓くアップデート

スピーチエンハンスメント機能の導入は、特に聴覚に課題を抱えるユーザーにとって、テレビ視聴の質を劇的に改善する可能性を秘めている。
音声の強調により、音量を上げずともセリフが明瞭に届くため、家族間の聴力差にも柔軟に対応できる。これは、音響アクセシビリティの向上という側面から見ても、極めて意義深い施策だと言える。

一方で、聴覚に問題を抱えていない一般ユーザーにとっても、本機能は映画やドラマの没入感を高めるツールとなる。
特に、近年セリフとBGMや効果音のバランスが難しい作品が増えており、視聴者が聞き取りに苦慮するケースが増加している。Sonosの新機能はそうした「聞き取りにくさ」に対する明確な解決策を提示している。

今後は、この技術がほかのモデルやブランドにも波及する可能性があり、音響体験の標準が一段と進化する未来も見えてくる。
AIが介在することで、音声の個別最適化が当たり前になる時代が近づいているのではないだろうか。Sonos Arc Ultraの今回のアップデートは、その第一歩となるものと考えられる。