Soneiumのシーケンサー収益の一部をASTRへ再投資　スターテイルが長期的コミットメントを表明

2025年4月3日、国内Web3企業のスターテイルは、ソニーグループと共同開発したL2ネットワーク「Soneium（ソニューム）」のシーケンサー収益の一部を、仮想通貨ASTRに再投資する方針を正式に発表した。この施策は短期的な値動きに左右されない、アスターネットワークへの長期的関与を示す戦略的な一手である。

ソニュームの収益性とASTRへの再投資戦略

スターテイルが今回発表した再投資方針は、単なる財務的施策ではない。L2（※1）ネットワークであるソニュームは、イーサリアムのスケーラビリティ問題を解決するためのインフラとして機能しており、その中核を担うのがシーケンサーである。
シーケンサーは、取引データを収集・整理し、最終的にイーサリアム上に記録する役割を担っている。これにより、トランザクション処理の効率が飛躍的に向上する。

このシーケンサーは、スターテイルとソニーグループの合弁会社「Sony Block Solutions Labs（SBSL）」が共同で運用しており、すでに継続的なオンチェーン収益を生み出している。2025年初頭のデータによれば、ソニュームの純利益はおよそ6,880万円に達しており、これはL2ネットワーク全体の中でも高い水準とされる。

スターテイルはこの収益の一部を、アスターネットワークのネイティブトークンであるASTRに再投資すると明言した。これは短期的な市場トレンドを追うものではなく、アスターへの長期的支援と、同ネットワークにおけるdApps（※2）の活性化を狙った施策だとされている。

今後、ソニューム上でのdApps展開が拡大すれば、トランザクションが増加し、シーケンサーの収益も向上する。その循環によって再投資がさらに加速し、持続的なエコシステム構築が可能になるとスターテイルは説明している。

※1 L2（レイヤー2）：メインチェーンの処理負荷を軽減し、取引速度や手数料効率を高めるための補助的ネットワークのこと。

※2 dApps（分散型アプリケーション）：ブロックチェーン上で動作するアプリケーション。中央管理者が存在せず、スマートコントラクトによって自律的に運用される。

持続可能な収益循環モデルがASTR市場に与える影響

今回の再投資戦略は、ASTRトークンに対する新たな需要の創出につながる可能性がある。仮想通貨市場では、プロジェクトによる自社トークンへの直接的な関与は投資家の信頼を高める要因となりやすく、特にスターテイルのような有力企業による動きは市場に明確なポジティブシグナルとして受け止められることが多い。

一方で、このモデルの持続性も重要な視点である。
現在、L2ネットワークの中で継続的な純利益を生み出している事例は少なく、ソニュームのような成功事例は例外的存在だ。他のL2がプロトコルインセンティブや補助金に依存する中、ソニュームは早期から実需ベースでの収益化を実現しており、これは市場における競争優位性となり得る。

スターテイルは今回の施策により、Web3エコシステム全体の成熟と分散型経済の自立を後押ししようとしている。単なるプロジェクト単体の利益追求ではなく、ネットワーク全体の価値向上を視野に入れた戦略的アプローチと言えるだろう。