セブンイレブン、自動配送ロボット「LOMBY」で高齢化地域へ挑む 八王子・南大沢で実証実験開始

セブンイレブン・ジャパンは2025年5月19日、日本国内で自動走行ロボットを活用した商品配達の実証実験を開始した。
実施エリアは東京都八王子市の南大沢で、配達にはスタートアップ企業が開発した屋外型ロボット「LOMBY」が使われる。
高齢化が進む南大沢で始まった、配達インフラの自動化という挑戦
実証実験は2025年5月19日にスタートし、翌年2月28日まで継続される予定だ。
対象となるのは八王子市の南大沢エリア全域で、中心となる店舗はセブンイレブン南大沢駅前店と八王子南大沢店の2店舗である。
ここからおよそ3,000種類のセブンイレブン商品が配達対象となり、注文受付時間は9時30分から20時、配送料は330円と設定されている。
注目すべきは、配達に使用される自動走行ロボット「LOMBY」の性能だ。
LOMBYは信号や横断歩道の認識機能を搭載しており、歩行者や交通状況をリアルタイムで判断しながら安全に走行できる。
スズキの電動車いす技術を基に開発された台車がベースとなっており、既存のモビリティ技術を応用した設計となっている点も特徴である。
この実証が行われる南大沢は、坂道や階段が多く、高齢化が顕著に進行している住宅エリアだ。徒歩での移動に課題を抱える住民が増加するなか、LOMBYによる配達は日常の利便性を高め、外出負担を軽減する可能性がある。
人手不足と都市高齢化に挑む次世代物流の展望
今回の取り組みは、物流業界全体が直面する課題である、「配達員不足」への実践的な対応策とも言える。特に、都市部郊外に多く見られる「買い物難民(※)」や高齢世帯の増加が予想される地域において、需要は今後ますます高まるだろう。
現在は南大沢のみでの導入だが、実証結果をもとに他地域への展開も期待できる。
一方で、ロボットによる配達が住民にどれだけ受け入れられるか、利用率や満足度など社会的受容性のデータ収集が実験の重要な焦点となるだろう。
また、ロボットの通行ルート確保や障害物対応といった課題も残されている。多様な地形条件に対応できるかどうかが、保守運用体制の整備も今後の展開に大きく関わってくると思われる。
今回の実証実験は、単なる技術のトライアルではなく、未来の生活スタイルを形づくる「社会インフラの実験」として捉えるべきであろう。
※買い物難民:高齢化や交通網の衰退などにより、日常の買い物に困難を抱える人々を指す社会問題。特に郊外や地方で深刻化している。