マーケットエンタープライズ、生成AIで業務効率化 年間7.5万時間削減を試算

2025年5月30日、国内リユースEC大手のマーケットエンタープライズが公表した社内アンケート結果によると、生成AIの業務利用率は9割を超え、年間で7万5000時間以上の業務時間削減効果があると試算されている。
生成AI活用率95%超 全社導入で月6000時間を効率化
マーケットエンタープライズは、業務効率化と生産性向上を目的に、全社的に生成AIの活用を推進している。
2025年4月に実施された社内アンケートによれば、社員の95.18%が月に数回以上生成AIを業務で活用していると回答した。これにより、同月には6268時間の業務時間を削減することに成功。年間に換算すると7万5216時間に及ぶ効率化が見込まれるという。
背景には、段階的な生成AI導入の取り組みがある。
まず、社内公募により46名の社員が参画する「生成AIプロジェクト」を立ち上げ、動画を通じたナレッジ共有を実施。加えて、全社員を対象にGoogle Geminiの有料版を導入し、業務レベルでの活用を支援してきた。
業務マニュアルの検索にはRAG(※1)を活用し、1000ページ超のガイドブックや社内規定へのアクセスを迅速化。さらに、Sapeet社のAIロープレによる営業研修では、管理者の運営負担を約30%削減した。
東大発スタートアップWanderlustと共同開発中のAI営業アシスタントも、優秀なセールススキルの継承に向けて活用されている。
※1 RAG:Retrieval-Augmented Generationの略。外部データを検索・取り込みながらAIが回答生成を行う技術。
生成AI活用は社員スキルと企業価値をどう変えるか
マーケットエンタープライズの取り組みは、単なる業務効率化にとどまらない。社員一人ひとりが生成AIを扱えるようになったことは、企業全体のデジタルリテラシー向上につながっている。特に若手層においては、プロンプト設計(※2)やAIとの協業スキルが新たな業務価値を生むと評価されている。
同社は2025年4月、Google主催の「生成AIで業務を加速!Google Workspace with Gemini 活用事例共有 ユーザー会」イベントにも登壇。Geminiの活用事例を社外に発信し、リーディングカンパニーとしての地位を確立しつつある。
また、ベトナムのオフショア拠点ではGitHub Copilotを用いた開発支援も進められており、システム領域でもAI導入が進行中だ。
今後、生成AIはさらなる個別最適化と自動化を後押しするとみられる。一方で、AIへの過信や情報漏洩リスクも懸念されるため、企業としてのガバナンス強化が求められる局面にある。
とはいえ、実績ベースで7万時間超の削減が可能であるなら、生成AIは確実に次世代の業務基盤となり得ると言えるだろう。
※2 プロンプト設計:AIに指示を出す文言(プロンプト)を適切に構成するスキル。生成結果の品質に直結するため、業務活用において重要な要素とされる。