Sakana AI、脳の仕組みに近い思考可視化AIモデル「CTM」を発表

2025年5月12日、東京を拠点とするSakana AIが、脳の神経細胞の活動タイミングを重視する新AIモデル「CTM（Continuous Thought Machine）」を発表した。AI技術における新たな一歩として注目が集まっている。

脳の構造に近づくCTM、その仕組みと革新性

Sakana AIが公開したCTMは、従来のAIモデルに欠けていた「タイミング」という要素に着目した構造を持つ。神経細胞がいつ発火するかという活動タイミングの情報を取り込み、それをベースに次の処理を判断する設計だ。
これにより、単なる情報処理ではなく「考える」過程を模倣できるとされる。

CTMでは、各ニューロンが独立して動くのではなく、他のニューロンと同期しながら活動する点も特徴的である。この同期性により、複数の非言語的ステップを含む複雑な課題にも対応可能になった。
思考の流れを保持したまま処理を進められるというのは、これまでのAIには見られなかった特性だ。

さらに注目されるのは、CTMが自らの思考プロセスを可視化できる機能を持つ点である。タスクの進行に伴い、どの部分に注目し、どのようなステップで判断が行われたのかをユーザーが視覚的に確認できる。
これはAIのブラックボックス性を軽減する画期的な要素だと考えられる。

実証例としては、2次元迷路の探索タスクが示されている。CTMは迷路の一部に注目しながらルートを判断し、その思考の時間的な変遷が視覚的に再現された。
画像認識でも、視線が画像内を動くようなプロセスが確認され、より人間に近い認識の在り方が示されたという。

CTMの可能性と今後の展望

CTMの発表は、AIが単なる演算処理を超え、人間の思考様式に近づきつつあることを示している。特に、複雑なタスクを段階的に処理できる点や非言語的な判断を下す能力は、従来のAIにはなかった大きな進展と言える。
これは医療やロボティクス、教育分野など多様な領域への応用を広げる可能性を持つ。

また、CTMが提供する可視化機能は、AIの透明性や信頼性を高める上で極めて有効だ。企業の意思決定支援や自律型システムの開発において、ユーザーがAIの判断根拠を把握できるというのは、導入のハードルを下げる大きな要因となるだろう。

Sakana AIは今後もCTMの改良を続け、その適用範囲をさらに広げていくと予測される。将来的には、多言語対応や記憶保持機能の向上を通じて、より人間に近い知能を実現する可能性が高い。CTMがAIの「思考モデル」の新たな標準となることも十分に考えられる。

今のところ、CTMは研究開発段階だが、商用化が進めば、企業や社会の中でどのような課題に対応できるのか、その本質的価値が明らかになるだろう。