サム・アルトマンがブログを更新　AIによって産業が変わる中、人間社会はどう変わらなくてはいけないか

OpenAIのCEOであるサム・アルトマンは、2月10日に投稿した最新のブログにて、AIの変革の規模と速度は従来の技術革新をはるかに超えるものであると語った。
本稿では、アルトマンの分析を基に、AIがもたらす産業構造の変化と、それに伴う社会変革の必要性について考察する。

急速に進むAIコストの低下

アルトマンの分析によると、AI技術の進化における最も重要な特徴は、その急速なコスト低下にあるという。AIの利用コストは約12ヶ月で10分の1に低下している。この進化速度について、「ムーアの法則」を引き合いに出し、いかに進化が早いかを強調した。

　ムーアの法則とは、技術の進歩に関する経験則からの法則で、半導体の集積密度が18ヶ月ごとに2倍になるというものだ。ムーアの法則の進化速度に対し、AIのコスト低下は12ヶ月で10倍という劇的なペースで進んでおり、アルトマンはAIの進化速度が「信じられないほど強力」だと指摘する。

　この急激なコスト低下は、AIの普及を加速させる重要な要因となっているという。アルトマンは、投資額に対するAIの知能向上が対数的に増加し、その社会経済的価値は超指数関数的に成長すると指摘している。

AIエージェントが変える産業構造

アルトマンは、AIの影響を半導体革命に例えた。
半導体が社会のあらゆる領域に浸透し、産業構造を根本から変えたように、AIも経済の隅々にまで浸透し、私たちの生活や仕事のあり方を劇的に変えていくと予測している。
一般の人は半導体がどこでどういう役割を果たしているのか分かりづらいので、変化は目には見えにくいが、生活には確実に影響が出ている。それと近い質の変質が、AIの台頭によって起こるというのだ。

　特に注目すべきは、「AIエージェントの台頭について」である。アルトマンは、トップ企業で数年の経験を持つエンジニアと同等の能力を持つAIエージェントが出現すると予測している。そのようなエージェントが100万単位で展開された場合、産業界は変化を余儀なくされる。

　Forbesのコントリビューターであるジョン・ワーナー氏は11日の記事で、私たち全員がAIエージェントのマネージャーになる必要性を訴えた。ワーナー氏は「今後、私たちにはAIエージェントに様々なタスクを委任するためのマネジメントスキルが必要になる」と指摘しており、単なる自動化ではなく、人間の知的労働の本質的な変革が求められるとした。

変革期に求められる適応力

2025年の日常生活は2024年とさほど変わらないだろう。しかし、その背後では劇的な変化が着実に進行している。アルトマンは、この変革期において最も重要な資質として、意思決定力、適応力、そして強靭性を挙げている。

　特に、資本と労働の力関係が大きく変化する可能性があり、早期の対応が必要になるとアルトマンは警告している。その一方で、AIの恩恵を広く分配する方法として、世界中の人々に「計算能力の予算」を提供するという革新的なアイデアも提案している。

　2035年までに、誰もが2025年の全人類に匹敵する知的能力を活用できる世界の実現。この可能性は、人類の創造性を最大限に解放するかもしれないが、うまく適応できなければ、単にAIに需要を奪われるだけになってしまうかも知れない。
変革期を乗り越えるためには、労働市場の変化に備えた教育・スキルアップや、AIの恩恵を広く分配する仕組みの設計が必要だろう。