みんがく、生成AIで歴史上の人物と対話できる学習アプリ モデル校を募集

株式会社みんがくは2025年5月29日、歴史上の人物と対話できる生成AIアプリ「歴史人物シミュレーター Ver2」の実証実験モデル校の募集を開始したと発表した。日本国内の教育現場に向けた取り組みで、先着10校を対象に開発の有効性を検証する。
歴史的人物との対話で「本質的な学び」を促すAIアプリ
株式会社みんがくは、生成AIを活用して歴史上の人物と対話できる学習アプリ「歴史人物シミュレーター Ver2」の導入実証を目的に、全国の教育機関から先着10校をモデル校として募集すると発表した。
このアプリは玉川大学教育学部・濵田英毅研究室と共同で開発されたもので、歴史的事実に基づいたチャットボットが特徴。ユーザーは、例えば坂本龍馬や織田信長といった歴史的人物と“対話”を行い、その思考や行動の背景にある社会構造や価値観を学ぶことができる。
2024年に開発された初版「Ver1」をベースに、今回のVer2では現場の教師や生徒からのフィードバックをもとに機能改善と内容の拡充を実施。教材データには株式会社旺文社の歴史書籍が採用され、セキュリティ面ではMicrosoft Azureの基準を満たすChatGPT環境を利用している。
濵田教授は、歴史的決断の背景には複雑な社会的要因があることを指摘した上で、それを簡潔に伝える力はこれまで専門家でしか持ち得なかったが、「生成AIの進化によって誰でも本質的な歴史の学びが可能となり、同アプリで歴史を身近に感じることができる」と語っている。
実証実験に参加するモデル校には、アンケート協力や授業見学の受け入れ、教職員や生徒へのヒアリングが求められるが、協力範囲は柔軟に調整可能とされている。
生成AIが変える歴史教育の現場 理解深化と教育格差の課題も
今回の実証実験は、AI技術が教育現場における学びの質をどこまで高められるかを測る試金石となる。特に歴史分野において人物の視点から出来事を追体験する学びは、記憶偏重型の授業では得難い「理解の深化」へとつながる可能性がある。
みんがくは同アプリによって「教科書には書かれていない動機や思考過程を探る対話型の学び」が提供されるとし、生徒の主体的な学習態度や批判的思考力の育成にも寄与すると説明している。
一方で、すべての学校に高度なICT環境が整っているわけではなく、教育格差の拡大が課題となる懸念もある。
また、AIによる発話があくまで生成結果であり、誤情報を見抜く力を育てる必要性を理解させる指導も不可欠であるため、教師の役割はむしろ重要性を増すとも言える。
教育分野における生成AIの活用は急速に進んでおり、今回の実証結果次第では全国的な導入や教科書の補完ツールとしての採用も視野に入る。AIと人間の対話を通じた学びが、今後の教育スタンダードとなるか注目される。