【Progmat Coin】法規制が整い、日本でもついに始まるステーブルコインの発行 そのインフラ基盤として期待されるProgmat Coinの概要とは
6/1の改正資金決済法案の施行によって、ステーブルコインの発行が可能になりました。今後、様々な用途で円のステーブルコインの活用が期待されている中で、三菱UFJ信託銀行やみずほ信託銀行などの日本の大手金融機関が「Progmat」というブロックチェーン基盤を共同開発しています。今回はその中でもPragmatのステーブルコイン発行基盤である「Pragmat Coin」に焦点をあてて、概要を解説していきます。
Progmat とは
ブロックチェーンを基盤技術とした金融インフラである「Progmat」は、これまでの金融取引のDX化と新市場の創出を目指しており、様々な金融機関、仲介業者等が参加可能なオープンな仕組みとなっています。
Progmatは「ST(セキュリティトークン)」「SC(ステーブルコイン)」「UT(ユーティリティトークン)」を発行・管理するための独立したネットワークで構成され、クロスチェーンにより他のデジタルアセットとの連携も想定されています。
既にデジタルアセットに関する様々なユースケースを企業横断で具現化する枠組みに、80社を超える企業が参画しており、複数のPJが既に開始されています。
Progmat Coinの仕組み
「Progmat Coin」は、1coin=1円で価値が固定された、ブロックチェーン上で移転可能なSCの発行・管理を目的としたプラットフォームです。信託の仕組みを活用して法定通貨を裏付資産とした受益証券発行信託を組成し、1円単位の受益権をSC化することで、償還の確実性を担保しています。
この仕組みをより簡易化して説明すると、以下のような流れです。
Pragmat Coinではステーブルコインの発行プロセスにおいて、信託会社を活用します。ステーブルコインを作りたい人(発行者)は、1ステーブルコインが1円に等しいというルールを設け、信託会社に1円を預けます。
そして、発行者はその1円に対して、1ステーブルコインを作ります。これで、作ったステーブルコインの価値が1円であることが保証されます。
ステーブルコインを持つユーザーは、そのコインが本当に1円の価値があるという証明として、信託会社がその裏付けとなる1円をしっかりと管理していることを確認できます。
そして、ステーブルコインの持ち主は、いつでもそのコインを1円に交換することができるため、ステーブルコインの価値が確実に保たれ、安心して使うことが出来るというものです。
昨年のアルゴリズム型ステーブルコイン Tera/Lunaの崩壊や今年のUCDCのデペックなど、投資家保護の観点ではあってはならない金融事故が度々発生していますが、Pragmat Coinでは円のSCの償還を信託の仕組みを活用して確実に行えるようにすることで、法規制に準拠した形で通貨の安定稼働と投資家保護を担保しています。
また、ユニバーサルなデジタルアセット決済手段を目指しており、クロスチェーン技術を用いて、Progmat以外のSTを含む広範なデジタルアセットとの決済や、CBDCや他のSC等の決済手段とのシームレスな交換を実現できるとしています。
Pragmat Coinのクロスチェーン技術は、先日記事でも取り上げた「TOKI」が活用されています。深く知りたい方はぜひご一読ください。
ユースケース
Pragmat Coinの活用ユースケースとしてST取引時のメリットが挙げられています。
ST取引において、資金決済手段が法定通貨(銀行送金)しか存在しない場合、取引から決済完了までのリードタイムがあり、金商業者間の事務コストが掛かるうえ、他行送金手数料も発生します。
ST・SCの一体処理が可能になると、取引完了が即時に行われ、かつ全ての処理を全自動化可能で、且つ送金手数料も低減されるというメリットがあります。
Progmat Coinを活用したSC発行はまだ(2023年6月現在)ですが、STの具体例としては、最近、三井物産デジタル・アセットマネジメントおよびLayerX(レイヤーエックス)がローンチしたデジタル証券(セキュリティトークン:ST)を通じて「安定資産」に投資できる個人向けオンライン資産運用サービス「ALTERNA(オルタナ)」が挙げられます。
なお「オルタナ」では、三井物産グループの不動産・インフラなどの実物資産に1口10万円からの小口投資が可能になっており、スマートフォンからすべての手続きを完結することができる仕様になっています。
今後は日本の法規制に準拠したSCが発行されることで、このようなSTの購入においてもSCの活用が促進され、Progmatが構想する世界感がさらに拡張していくことが予想されます。
初号案件の投資対象として、商品名は「三井物産のデジタル証券~日本橋・人形町~(譲渡制限付)」として日本橋の不動産が取り扱われています。
今後の展望
これまで不動産やアート、非上場企業の株式などを小口の金融商品として売買する場合、それを商品化することにかかるコストを案件規模が越えられず、証券会社や信託銀行、仲介業者に経済インセンティブがないため、小口かつ個人投資家向けの市場の発展は見られませんでした。
しかし、「Progmat」のようなブロックチェーンインフラを活用することで、個人投資家向けの小口商品をこれまでよりも容易に組成し、かつトラストレスな取引で中間コストも排除することで、個人間のやり取りが活発化し、様々なアセットを幅広い投資家が売買できる世界が立ち現れてきます。
身の回りのものがアセット化し、流動性を持つことで金融取引の市場がかつてないほどに大きくなり、これまで投資に興味を持たなかった層の流入など加わるなど、人類がこれまでまだ見ぬ経済の発展に向けて、現在はその過渡期にあると考えています。また、Progmatはクロスチェーンを活用し、パブリックブロックチェーンとの接続性も実現していくため、その経済規模はグローバル規模にも膨れ上がります。
日本は先進国の中でもこの分野の法規制が一歩進んでいるとも言われていますが、そんな時代の過渡期に立ち会えることを嬉しく思いますし、今後もこの領域の動向をウォッチしていきたいと考えています。
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