ポルシェ、AIが“快適な走り”を評価するシステムを開発　車両が自動で構造を微調整する未来も

2025年4月7日、ポルシェエンジニアリング（ドイツ）が、AI（人工知能）を用いた走行快適性評価システムを開発したと報道された。
車両の挙動をデータとして解析する技術で、将来的に量産車への搭載も視野に入れており、自動車の快適性と安全性をリアルタイムに管理する可能性を秘めている。

AIによる“走り心地”の見える化

ポルシェエンジニアリングが開発した新技術は、車両の各部位のセンサーからの情報をAIが解析することで快適性の評価を可能にするシステムだ。
具体的には、車両に搭載された高精度の加速度センサーや振動センサーから得られる12の入力値をもとに、AIが10の評価パラメータを出力する。

これにより、シャシー(※)のセットアップがどれだけ顧客の理想に近いかを短時間で判断できるようになる。
評価にかかる時間はわずか数分で、開発サイクルの短縮にも貢献するという。

また、このAIシステムは、ChatGPTなどのAIサービスでも使用されている、ニューラルネットワークという手法を活用しており、過去に蓄積された膨大な走行データから学習して精度を高めている。
これにより、路面状況や車両タイプが異なっても一貫した評価が可能になるとされている。

従来の方法では、テストドライバーの経験や感覚が大きく影響していたため、結果のばらつきや主観的偏差が課題だった。

AIによる補完は、こうした評価の“ブレ”を排除し、客観的かつ一貫性のある基準の導入を可能にする点で意義深い。

※シャシー：車両の基礎構造を指し、サスペンション、ステアリング、ブレーキなどの主要コンポーネントが含まれる。快適性や安全性に直結するため、車両開発における最重要部位の一つ。

量産車にも“AI”が宿る時代へ

ポルシェエンジニアリングは、将来的にこの技術を量産車に搭載し、一般ユーザーの車両にも快適性評価をリアルタイムで適用する構想を描いている。
さらに、車両が自律的に微調整を行う“自己調整機能”の開発も視野に入っているという。
実現すれば、AIが環境に応じて車両の形状を自律的に調整して、ユーザーにとってより快適な走りを実現できるだろう。

ただ、AIシステムの導入には高精度センサーやデータ通信のインフラが前提となるため、車両コストの上昇を招くことは懸念材料だ。
仮に量産車への導入が進んだ場合、これらの追加機構が価格帯にどのような影響を与えるのかについては、慎重な検証が必要になるだろう。

ポルシェが開発したこの技術は、「機械による感覚の再構築」という現代的課題に対する、先進的な解答の一つであるといえる。
その進展は、自動車産業における評価基準の再定義と、人間とAIの役割分担に大きな影響を与えていくだろう。